■「日本人全体が夢中になって互にだましたりだまされたり」
戦前から戦中にかけて、22本の劇映画を撮り続けた映画監督の伊丹万作。
伊丹十三の父親で、戦争廃止を強く望んでいた彼は、「戦争責任者の問題」というエッセイの中で、こう述べている。

多くの人が、今度の戦争で
だまされていたという
みながみな口を揃えて
だまされていたという
(中略)
いくら何でも、
わずか一人や二人の智慧で
一億の人間が
だませるわけのものではない
(中略)
つまり日本人全体が夢中になって
互にだましたりだまされたり
していたのだろうと思う
(中略)
新聞報道の愚劣さ
ラジオのばかばかしさや
さては町会 隣組 警防団 婦人会
といったような民間の組織が
いかに熱心にかつ自発的に
だます側に協力していたかを
思い出してみれば
直ぐにわかることである

長年、伊丹万作を研究してきた映画評論家の吉村英夫氏はこう語る。
映画評論家 吉村英夫氏
「騙す側と騙される側を結合させたのがマスメディア。新聞とラジオと戦意高揚の映画と。そのマスメディアが大本営発表みたいに一緒のことを言い出したら、僕らはもう完全に騙されてしまう。国民が諦めてしまったり、黙り込んでしまったら、マスメディアはますます悪くなる」
日下部キャスター
「主権者である一般の人々がマスコミも見続けると?」
映画評論家 吉村英夫氏
「はい。そうでなければ、また騙されるという罪を犯してしまう」
