七転八倒の連続…縦軸を意識したプロット作り

そもそもこのドラマの企画が最初に持ち込まれたのは、2020年のコロナ禍前まで遡るという。福田氏が飯田プロデューサーと企画を作りあげ、本作の放送に漕ぎ着けるまでには実に4年の月日があった。最初の企画書について福田氏は、「当時は中身もそんなに固まっていなかったのですが、弁護士モノで大きな正義を貫くために殺人犯を無罪にするのか、正義とは何か、そんな天秤のようなドラマをイメージしていました」と回顧。それを受け、山本氏は「ベースとなった“正義とは何か、悪とは何か”という強いメッセージは絶対に残そうという共通認識が私たち4人にはあったので。それを元に、明墨のキャラクターやストーリー、縦軸にある12年前の糸井一家殺人事件の内容を固めていきました」と補足する。

脱稿するまでにおよそ1年という月日を要した本作の台本だが、脚本家が4人で挑んでも生みの苦しみは想像以上だったと李氏。「それこそ七転八倒しながらでしたね」と苦笑交じりだ。各話の事件だけでなく、縦軸を大きく意識した本作だからこそ頭を抱えた内容について、「冤罪を題材にした作品は本当にたくさんあって、初期の段階で予想がつくようになっています。最終的に冤罪を晴らして終わるドラマが多い中、視聴者の皆さんに“またそのパターンか”と思われないよう、どうしたら興味を持続させられるのかとすごく悩みました」と李氏。苦悩を語りつつも、一筋縄ではいかない最終回が待ち受けていることを予感させる。

その一方で、スムーズに進んだのが第8話の台本だという。山本氏は「たくさん張っていた伏線を8話で概ね回収したのですが、予め考えていた内容だったからこそ、明かす作業は比較的早かったかもしれません」と話す。さらに飯田プロデューサーは第8話の台本を読んだ際、「糸井一家殺人事件の詳細を明墨からだけでなく、林泰文さん演じる青山憲治、岩田剛典さん演じる緋山啓太という三方向から明かす手法が斬新で、なるほどなと思いました。読んだ瞬間、これはうまくいくぞという手応えを感じましたね」と絶賛。まさに一見の価値あり、“共同脚本”だからこそ作り上げることのできたシーンだ。