補選“惨敗”で残された3つのシナリオ
とはいえ、現状は崖っぷちだ。

4月28日の衆院の3つの補欠選挙。“保守王国”島根1区を含め1勝もできなかったことで、またも「岸田は終わった」という評価が永田町で広まりつつある。
自民党関係者
「総裁選で(岸田総理の)推薦人20名が集まらないことが明確になった」
自民党幹部
「これで岸田総理の総裁選での再選はなくなった」
あくまで9月の自民党総裁選での再選を目指す考えは曲げていない岸田総理だが、今後の選択肢としては、以下の3つがあると言われている。
①総裁選前の解散総選挙
②解散せずに総裁選に突入する
③総裁選に出ない(出られない)
これまで岸田総理にとっての本命は、①「総裁選前の解散総選挙」だったが、補選の惨敗で「こんな状況で選挙に臨むのは集団自決だ」などの声が自民党内から漏れる。与党・公明党が早期解散に否定的なこともあわせると、実現に向けてのハードルが極めて高くなったのは間違いない。
ただ、総理自身はまだ模索を続けているようだ。6月に実施される1人4万円の定額減税や外交成果などを訴えるほか、かねてから掲げている北朝鮮訪問や憲法改正の実現についても具体的な結果を出そうとしている。
②「解散せずに総裁選に突入する」については、現時点では現職である岸田総理を引きずりおろす具体的な動きが見えておらず、そのまま総裁選に出馬しても勝てるのではないか、との見方が一部の政府関係者などから出ている。
また、石破元幹事長などのライバルを事前に内閣改造や党役員人事で処遇し、取り込めば良いとの声もある。
一方で、9月に選ばれる自民党総裁で解散総選挙や参院選を戦うことになることから、与党内では「岸田総理のまま選挙に臨むことはない」との見方が大半だ。
総裁選で動向が注目される閣僚経験者は「結局、総裁選の勝者は『選挙に勝てる人』になる」と予見している。
③「総裁選に出ない(出られない)」はどうか。総理大臣のポストへのこだわりの強さを考えれば、岸田総理としては最後までとりたくないだろう選択肢なのは間違いない。ただ、総理を支える関係者からも「総理の座を引きずり降ろされるような形は避けたい」との声が出てきていて、このシナリオが最も濃厚、と見る政府・与党関係者も多い。
「99敗の男」〜“紅天”はあるか

俳優の真田広之氏がプロデュース・主演を務めるハリウッドドラマ「SHOGUN 将軍」。真田氏演じる吉井虎永は徳川家康からインスパイアされたとされる。
ネタバレにならないように詳しくは触れないが、ドラマの中では大老・石堂(石田三成がモチーフ)の策略によって窮地に陥った虎永が、“紅天”に打って出るのか、それとも降伏するのか、迫られる場面がある。
“紅天”とは、石堂を倒すため、大阪に攻め上ることだが、多勢に無勢は否めない。
勝ち目の薄い戦いに打って出るのか、座して死を待つのか。
家康に共感を覚えるという岸田総理だが、奇しくもこのドラマと今の岸田総理の置かれた状況は似ている。
総理の側近議員は、岸田総理は「99敗する男」だと語った。
総理側近議員
「小さい負けが次から次へとあって、あらゆるところで馬鹿にされてきたんだけど、どこか大事なところは必ず『1勝』できる人だと思ってる。その価値のある1勝は何が何でも手に入れるタイプ」
価値ある1勝を掴むための岸田総理の“紅天”はあるのか。秋の自民党総裁選に向け、政府・与党内の暗闘は続く。
TBSテレビ 政治部
官邸キャップ
川西 全