「臭い物に蓋」か「対岸の火事」か

いわれのない理由で3人もの命が突如として奪われた、あまりに痛ましくやるせなさだけがつのる事件は、未だ決着を見ない。

事件は、社会に様々な課題を投げ掛けた。人権問題とも密接に関与するもので、また、表面化しにくい事例でもある。そして生み出された結果は重大だった。

社会はそれをどのように受け止め、教訓としていくべきなのだろう。多岐にわたる課題を前に、ある種の思考停止に陥ってしまい、ともすれば「臭い物に蓋」とばかりに終止符を打ってしまいがちだ。

ただ、人のもろさ、持ちうる危うさ…。あるいは「対岸の火事」ですらないのかもしれない。取材を通じて話を聞くことのできた、精神分野の専門医の言葉を思い出す。

「4つの要素というものがある」
「不安、不眠、過労、孤立」
「これらが揃ったとき、誰にでも起こり得る」

本編は、前編中編・後編のうち、後編です。前編、中編も併せてご覧ください。

【前編】「絶対こいつだけは生かしておけない」刺さらなかった包丁をナイフに持ちかえて再び…そして3人殺害「刃物を捨てろ、撃つぞ」

【中編】「はらわた煮えくり返るわい」きっかけはネット掲示板 疑心暗鬼を加速させ3人殺害は「死刑覚悟」「私は今でも被害者。謝罪は拒否します」