「電磁波攻撃」被害 誰に相談してもダメなら…

事件が発生する3日前。別の知人と交わした通話には、犯行をほのめかす内容が含まれていた。

「健一の話、聞かない?」

岩田健一さんの様子を気にする河野被告。この時までに何度か、話し合いをする目的で岩田健一さんの自宅を訪れることはあったものの、健一さんの両親から追い返されるようになっていた。電話も繋がらなくなっていた。

「あいつ家におるんかな? もう家に乗り込むか」

知人がたしなめる。
「やめといた方がいいんじゃない? 警察呼ばれるで」

しかしこの時、既に河野被告の意思は固まりつつあった。

「あいつ殺さんことには気が済まん」
「誰に相談しても『キチガイ(※ママ)扱い』される。警察に相談しても…」

犯行に及ぶまでの数年間に、河野被告は電磁波攻撃や盗聴、そしてネット掲示板への書き込みなどの「被害」について、何回も警察に相談をしていた。

「もう自分でやるしかない」
「『電磁波』が飛んでくる以上、仕方ない」
「警察も動かんし」
「はらわた煮えくり返るわい」

一連の通話記録からは「電磁波攻撃」の存在を確信した河野被告が、その原因を探るうち、あらぬ方向へと懐疑心を持ち、孤独を深めていく構図が浮かび上がった。