50歳で突然、何かが変わるわけではない~40代後半から50代後半にかけての緩やかな差

50歳を境に生活が大きく切り替わるというより、いくつかの変化が40代後半から50代後半にかけて徐々に進んでいる様子がうかがえる。

仕事を見ると、就業中の割合は80.9%から77.0%、73.9%へ、正規雇用も51.4%から45.1%、41.5%へと緩やかに下がっている。50代前半でも働いている人が多数を占める一方、働き方には少しずつ変化が表れ始める時期と読める。

就業中の割合については3群間(年代3層)の差は統計的に有意ではなかったが、正規雇用については年齢群との間に統計的に有意な関連が確認されている。

家族との関係にもやや動きが見られる。親が同居または近距離にいる割合は59.6%から55.4%、46.3%へ低下する一方、介護経験は16.0%から19.4%、26.9%へ上昇する。親との近接、介護経験、孫の有無については、いずれも年齢群との間に統計的に有意な関連が確認された。

親との物理的な距離と、支援や介護にかかわる経験が同じ方向には動いていないところも興味深い。

親や義父母が同居または日常的に行き来できる範囲にいる割合は、50~54歳の55.4%から55~59歳では46.3%に低下するが、一方で介護経験者は19.4%から26.9%へ、そして「該当する親・義父母はいない」という回答が18.1%から29.0%へ増加している。

この調査は、親の生存状況や介護相手を直接確認した調査ではないため、介護後の死別を意味するとまでは言えないものの、50代後半では「これから親を支える」という段階だけでなく、すでに介護を経験した、終えた段階にいる人も増えていることがうかがえる。

また、住まいでは、住宅ローンを返済している人が38.0%から28.1%、23.9%へ減っている。一方、孫がいる人は50~54歳では2.7%にとどまり、55~59歳になると13.0%まで増加するが、まだ全体の1割強にとどまる。住宅ローン返済中と孫の有無については、いずれも3群間(年代3層)の差が統計的に有意であった。

こうした数字を合わせると、50代前半は何か一つの役割が終わり、次の役割へ「一斉に」移る節目とは捉えにくい。仕事や住宅への責任が続くなかで、親の高齢化や介護との接点が少しずつ増え、さらに先には孫を含む新しい家族関係も見え始める。そんな変化への中途に50代前半が位置しているとも言える。

50代前半に流れる「複数の時間」~仕事、子ども、親、住まい、同じ世代でも異なる現在地

ここまでの数字から見えてくる50代前半の姿を、改めて一言で表すのは難しい。

その背景には、50代前半がある特定の特徴を持つ一つの層というより、いくつかの異なる「時間」が重なる時期として見えてくることがある。

たとえば、会社や仕事にかかわる時間、住宅取得後の返済を続ける時間、子どもの成長を見守る時間、高齢になった親との関係を考える時間、そして、自身の健康や働き方、先の生活を考え始める時間である。

しかも、それらが同じ順序で進むとは限らない。50代前半でも子育ての最中にいる人がいれば、子どもがすでに独立した人もいる。親の介護を経験した人がいる一方、まだ介護との接点がない人も多い。住宅ローンを返している人と、すでに完済した人も同じ年代にいる。

「団塊ジュニア」という世代名でまとめると見えにくいが、本稿のデータで見ても同じ50代前半でも置かれている条件はかなり異なる。人生後半への移行は、一つの決まったライフコースを進むというより、仕事、家族、住まい、親との関係などを、それぞれの状況に応じて調整していく過程として捉えることもできるだろう。

50代前半から、その先の暮らしへ~不安と変化のなかで、どんな選択肢が残るのか

「団塊ジュニア」については、これまで「どのような時代を生きてきたか」という視点から世代論として語られることが多かった。厳しい雇用環境を経験した人が少なくないことや、その後の所得・資産形成への影響は、引き続き検証すべき重要なテーマである。

一方、今回のデータから見えてきた50代前半の姿は、「どれほど不遇だったか」という一つの評価だけには収まりにくい。

多くの人が仕事を続ける一方で、子どもとの関係は変わり、親の高齢化や介護との接点も増え始める。こうした変化の多くは50歳を境に一斉に起こるというより、40代後半から50代後半へ緩やかに進んでいる。人生後半へ向かう条件にも、すでにかなりの幅がある。

そして何より、50代前半は、仕事を終えた後の人生に入る時期というより、仕事を続けながら、家族、親、住まい、そして自分自身のこれからを同時に考え始める時期であるようにも見える。

仕事や家族、健康、経済状態が変化していくなかで、どのような条件があれば、自分なりに働き方や暮らし方を選び直す余地を持てるのか。自分自身の老後も近づいてくるなかで、50代前半の人たちは現在、何を気にかけ、何に不安を感じているのだろうか。

次回は、仕事、家計、健康・介護、家族、人とのつながり、社会や技術の変化まで、50代前半が抱える「不安」の中身を具体的に見ていくことにする。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員 小口 裕 )