■要旨
・高齢層の生活への影響は改善する一方、若年層では悪化傾向が明白である.
・若年層は通院割合が上昇しており、生活影響が大きい「うつ病」等が最多。
・健康寿命の延伸には、高齢期だけでなく若年期の健康課題の注視が不可欠。

はじめに

厚生労働省による国民生活基礎調査(2025年)の結果が公表された。今回公表されたのは、健康や介護分野を含む3年に1度の大規模調査の結果で、国の健康寿命の計算に使われる「健康上の問題で日常生活に影響があるか」の項目が含まれる。

2025年は国勢調査が実施された年であり、これまで国勢調査と国民生活基礎調査の大規模調査の双方が実施された年の健康寿命は、国勢調査に基づく完全生命表を使って計算されてきたことから、2025年の健康寿命も完全生命表の公表を待ってから算出されると考えられる。

そのため、本稿では、「健康上の問題で日常生活に影響があるか」の割合の推移をもとに、健康状態の変化について、性・年齢階級別に概観する。

健康上の問題で日常生活に影響があるか

1|高齢層で改善。若年層では悪化傾向。

2025年の「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答した割合の推移を年齢階級別に見ていく。男女とも65~84歳の高齢層で「影響がある」と回答した割合が低下しており、健康上の問題により日常生活に影響がある者の割合は改善傾向にあった。

しかし、若年層では男女とも改善はみられない。そこで年齢別の推移を確認するために、2001年調査の結果を1.0とした場合の2025年までの年齢階級別の推移に関しては、年によるばらつきはあるものの、25年間で、男女とも6~14歳と65~84歳では低下(改善)し、25~44歳の男女では上昇(悪化)していることがわかる。また、15~24歳の男女は低下傾向にあったが、2019年以降上昇に転じていた。年齢によって推移の方向は大きく異なっており、高齢層で改善が続く一方、若年層では高齢層ほどの改善はみられない。特に25~34歳では男女とも上昇傾向にあり、若年層と高齢層では異なる推移を示した。

2|若年層で入院者の割合、自覚症状がある割合は低下傾向。通院者の割合は増加傾向。

若年層では、受療状況や自覚症状はどのように変化しているのだろうか。国民生活基礎調査では、入院や通院の有無、自覚症状の有無を尋ねている。日常生活に影響がある割合が上昇している若年層に限定した結果によると、入院者割合、自覚症状有の割合はいずれも低下傾向にある一方、通院者割合は上昇傾向にあった。

そこで、通院者の症状をみると、2025年国民生活基礎調査において、男性では20~24歳から40~44歳までのすべての年齢階級で、通院者の最も気になる症状の第1位は「うつ病やその他のこころの病気」であり、その割合は15~17%だった。女性では30~34歳および35~39歳で第1位となり、その割合は16~19%だった。一方、20~24歳および25~29歳では、第1位は「その他」(18~20%)で、「うつ病やその他のこころの病気」は15~19%で第2位だった。

3|「日常生活に影響がある」の割合が高い症状

最も気になる症状として「うつ病やその他のこころの病気」と回答した人の51.9%が、健康上の問題で日常生活に影響があると回答していた。「パーキンソン病」「認知症」といった高齢期に多い症状に対し、「うつ病やその他のこころの病気」を最も気になる症状と回答した通院者を年齢別にみると、20~44歳が男性の31%、女性の32%を占めており、若い年代に多いことが特徴である。

若年層では通院者割合が上昇していることも踏まえると、若年層における健康上の問題の日常生活への影響は、今後注目すべき課題の一つと考えられる。

おわりに

本稿では、国民生活基礎調査の「健康上の問題で日常生活に影響がある」に着目し、性・年齢階級別の推移を確認した。高齢層で日常生活に影響がある割合は改善傾向にあり、健康寿命の延伸につながる可能性がある。しかし、若年層では高齢層とは異なり、日常生活に影響がある割合は上昇しており、健康状態の悪化が懸念される。

近年、若年層では、入院割合や自覚症状がある割合は低下している一方で、通院者割合の上昇がみられ、通院で多くみられる症状として「うつ病やその他のこころの病気」が含まれていた。ただし、「うつ病やその他のこころの病気」による通院の増加は、症状のある人が医療機関を受診するようになった可能性も考えられ、健康状態の悪化のみを示しているとはいえない。しかし、「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答する若年層が増加していることも踏まえると、その動向については今後も継続して注視していく必要がある。

健康上の問題による日常生活への影響は、高齢層のみの課題とは言えない。健康寿命の延伸を考える際には、高齢期の健康維持に加えて、若年期から日常生活への影響をもたらす健康課題にも目を向ける必要がある。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子 )