■要旨

・好相場が、投資家のNISAでの利益確定売りを増やした。

・なかでも若年層が、つみたて投資枠での売却を急増させた。

・資金不足や相場不安が、若年層のNISA売却を促している。

つみたて投資枠で売却が特に増加

NISA制度全体の売却データは、番外編となる本稿執筆時点で金融庁から公表されていないものの、新NISAの2年目となった2025年は初年の2024年と比べて、売却が増加した可能性が高い。日本証券業協会が公表している全証券会社の売却額を見ると、2025年は2024年と比べ、投資枠や商品を問わず売却額自体が大きく増加している。

本稿では1年間の運用状況を加味するため、売却率を年末残高ベースで算出した。その結果、成長投資枠の売却率は2024年の17%から2025年に16%へとやや低下している。投資信託については5%から6%へと1%ほど上昇したが、上場株式が27%から24%へと低下したためである。

その一方で、つみたて投資枠の売却率は2024年3%台だったが、2025年は5%台と約2ポイント上昇した。つみたて投資枠からの売却額、売却率は、ともに成長投資枠と比べると少額かつ低位にとどまっているものの、2年目は売却が初年と比べて膨らんだことがうかがえる。

利益確定の売却が膨らむ

つみたて投資枠からの売却が増加した要因として、2025年も運用環境が良好で、含み益を抱える人が増えたことで、利益確定の売却が出やすかったことが挙げられよう。実際に全証券会社の未実現損益を含む収益率を概算した結果から見ていく。なお、日本証券業協会から受取配当金額が公表されていないため、ここでの収益は配当や分配金を考慮しないキャピタル・リターンとなっている。全証券会社のつみたて投資枠の収益率は、2025年単年で18%、2年累積だと25%に達する計算になる。成長投資枠についても、売却率が上昇した投資信託では、つみたて投資枠と同水準の収益が上がっている。

つみたて投資枠対象商品の中で特に人気を集める「eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)」を2024年1月から毎月初に購入し、保有し続けた場合の収益率は2025年単年で20%、2年累積で28%程度となる。つみたて投資枠および成長投資枠の投資信託は、概ね「オルカン」を積立投資した場合と近い状況になっていることがうかがえる。

このように、つみたて投資枠や成長投資枠の投資信託の多くの購入者で含み益が拡大した状況を踏まえると、2024年以上に売却が膨らんだことも自然な動きと考えられる。

20歳代以下の急増は何を示唆するのか

もっとも、年代別の売却率の推移と売却理由のアンケート調査から、つみたて投資枠の売却増加には利益確定以外の要因もあった可能性が浮かび上がってくる。

まず年代別の売却率を見ると、2025年は各年代とも売却率が上昇したが、上昇幅は一律ではなかった。とりわけ20歳代以下で顕著であり、2024年時点で4%台と他の年代と比べて高かったが、2025年には9%と倍増し、売却が一段と膨らんだ。

次に、日本証券業協会の「新NISA開始後の利用動向に関する調査」の2025年のアンケート結果で売却理由を見ると、全年代、20歳代以下ともに「利益確定のため」が最も多くなっている。ただし、20歳代以下では「利益確定のため」の比率が全年代と同程度にとどまる一方、利益確定以外の売却理由が相対的に多く挙げられている。

「ポートフォリオ(保有銘柄)のリスク調整(リバランス)のため」、「配当金/分配金が魅力的ではなくなったため」の保有商品の見直しを示唆する理由が目立つ。それに加えて、「基準価額(株価)の下落が見込まれるから」、「損切のため」の下落相場を意識した理由、さらに「現金が必要となったため」という流動性確保の理由も相対的に高くなっている。

おわりに

2025年は結果的に良好な投資環境となったため、売却増加の主な要因は利益確定によるところが大きかったとみられる。しかしながら、2025年前半はトランプ米大統領の言動に金融市場が翻弄される場面もあり、そのような環境下で投資し続けることに不安を感じて売却に踏み切った若年層が一定数存在した可能性もある。また、手元に余裕資金が十分でない中でも積立投資を継続した結果、突発的に資金需要に直面して売却を余儀なくされたケースも考えられよう。いわば、巷で話題になった「NISA貧乏」ともいえる状況が、特に20歳代以下の一部で生じている可能性も否定できない。様々な理由があるものの、いずれにしても引き続き長期投資をいかに根付かせるかが課題となっているといえる。

2026年以降においても、20歳代以下を中心につみたて投資枠からの売却が高止まりするのか、あるいはさらに拡大していくのか、口座開設や買付と合わせて今後の利用動向に注目したい。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 上席研究員 前山 裕亮)