問われる成長の雇用創出力
インド経済の高成長と低い失業率は、雇用問題が解消したことを意味しない。より多くの人が何らかの仕事に就くようになった一方、その仕事が安定した所得や十分な就労日数を伴うとは限らない。若年失業率は全体を大きく上回り、常用雇用・給与所得者も就業者の4分の1弱にとどまる。
若者による抗議と農村雇用制度をめぐる抗議は、雇用不満の異なる側面を映している。若者が求めているのは、教育や競争試験の先にある安定した職への公正な入口である。一方、農村の労働者や農民が求めているのは、仕事が不足する時期にも就労機会と所得を補える安全網である。前者は希望する仕事に就けない問題、後者は働いていても生活が安定しない問題といえる。
今後の政策には、雇用者数を増やすだけでなく、製造業やサービス業で安定した賃金雇用を広げることが求められる。同時に、雇用構造の転換には時間がかかるため、農村雇用保障のような所得の安全網を維持することも欠かせない。インド経済の成長力を評価するうえでは、成長率の高さだけでなく、どの層に、どのような仕事を、どれだけ生み出しているかが一段と重要になろう。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠)