日経平均株価は半年足らずで約44%上昇し、一時7万2,000円を突破したが、日本企業の好調な業績見通しを踏まえれば、この水準はファンダメンタルズで概ね説明可能であり、バブルとは言えない。
また、AI・半導体関連株への資金集中は産業構造の変化を反映した自然な現象であり、市場の歪みとは言い切れない。
一方、将来の高い業績期待が織り込まれているため、短期的な株価急落には注意が必要だが、調整局面は長期投資家にとって押し目買いの好機となり得る。

市場最高値更新を繰り返す日経平均株価
日経平均株価の上昇が止まらない。6月下旬には一時7万2000円を超えた。25年末のおよそ5万円から半年も経たずに2万2000円超(約44%)上昇した格好だ。
一部には「バブル」といった指摘もあるせいか、急ピッチな株価上昇に“高所恐怖症”の投資家も少なくないようだ。実際、日経平均が6万円を超えたときに「利益確定売りした」とわざわざ連絡をくれた友人もいる。

バブルというほどではない
実際のところ日経平均はバブルなのだろうか?ファンダメンタルズ分析を主とする筆者の観点では、7万円程度の株価水準は“やや前のめり”ではあるが、決してバブルというほどではない。
日本企業は26年度・27年度と2年連続で2桁増益が見込まれている。詳細は割愛するが、これを前提とすれば、7万2000円程度まではファンダメンタルズ的に十分に正当化できる。

AI・半導体関連が市場を歪めている!?
「バブルか否か」と並んで話題なのが、「AI・半導体関連銘柄ばかり株価が上昇していて、今の株式市場は歪んでいる」という指摘だ。確かに去年あたりからAI・半導体関連銘柄の株価上昇が目立つし、次々と新たなAI関連企業に物色が広がっている。
米国市場でもハイテク株が株式市場を牽引していて、S&P500を主要7社(Magnificent7;MAG7)と他の493社(=S&P493)に区別すると、MAG7の時価総額合計が20年初と比べて4倍以上に増加したのに対して、S&P493は2倍弱にとどまる。
実は、米国市場でも「ハイテク株ばかり値上がりしていて不自然だ」という指摘は20年時点から何度も繰り返されてきた。しかし、ハイテク株が一時的に調整する場面は何度かあったものの、結果的に時価総額の差は拡大した。

産業の主役交代
背景にあるのは産業構造の変化だろう。既存の主要産業と比べて、AI・半導体などハイテク関連は業績の伸びが目覚ましい。たとえば世界半導体市場統計が発表した26年の半導体市場規模は25年対比1.9倍となる見通しだ。
日本企業についても、6月16日付け日本経済新聞朝刊が「日本企業の稼ぎ頭が代わった」と報じたように、半導体関連企業の純利益合計額が自動車産業のそれを26年度に超える見通しだ。より多く稼ぐ企業の株価が上昇するのは自然なことで、それを“歪み”と決めつけるのはむしろ無理があるのではないか。
一時的な株価急落への心構えと基本の投資スタンス
注意点はある。「日経平均は7万2000円くらいまで正当化できる」と述べたが、これは、まだ始まってもいない27年度の2桁増益も前提にしているわけで、ここに落とし穴がある。
ちょうどDeepseekショック直前や令和のブラックマンデー直前と似たような状況で、ちょっとした出来事(予想外に弱い/強い経済指標、要人発言、金利や為替など他市場の動向など)に株価が敏感に反応しやすい。何がきっかけになるか分からないが、6万円程度までのスピード調整がいつ起きても不思議でない。“高所恐怖症”の投資家にとって、こうした調整局面は逆に絶好の押し目買いチャンスとみておくべきだろう。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究理事 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾)