要旨
・中東ホルムズ海峡の封鎖が招いた過去最大の石油供給危機。
・各国の備蓄放出や迂回パイプラインの活用で市場は混乱を回避。
・中国の輸入削減やEV普及も原油価格の高騰抑制に大きく寄与。
世界を揺るがす「ホルムズ海峡封鎖」と原油市場の衝撃
「時には想定外の事態を覚悟することが最善です」――中東の要衝であるホルムズ海峡が封鎖された際、世界中の市場とエネルギー関係者は深いパニックに陥りました。
何千隻もの船舶が足止めされ、航行中の船への攻撃も相次ぐという前代未聞の危機が現実のものとなったのです。国際エネルギー機関(IEA)の発表によれば、これは歴史上最大の石油供給危機であり、世界最大の産油地域で勃発した深刻な事態でした。
ホルムズ海峡は、世界で海上取引される石油やガスの20%から25%を担う極めて重要なルートです。これは日量にして約2000万バレル規模に相当し、石油のみならず食料供給や肥料といった世界の重要物資の流通も足止めを受けることになりました。
1970年代のイラン革命以来、この海峡の地政学的リスクと重要性は誰もが認識していたものの、具体的なリスク対策は長年にわたり後回しにされてきたのが実情です。原油価格の急騰と供給不足に対する終わりの見えない不安が広がり、その波及効果は世界経済全体に暗い影を落としました。
当時、多くの金融機関やアナリストは、原油価格が1バレル=150ドル、さらには200ドルにまで高騰すると予測していました。
しかし、実際に起きた現実は市場の予想とは異なるものでした。価格は一時1バレル=126ドルを突破したものの、最悪のシナリオとされた壊滅的な価格高騰には至らなかったのです。混乱の中でも市場は驚くべき柔軟性を発揮し、危機に適応していきました。
では、なぜ「世代最大」とまで称されたエネルギー危機は、予想に反してパニックを回避できたのでしょうか。
