農村では働いていても生活が安定しない

第二の問題は、農村部を中心に、安定した雇用と十分な所得を確保しにくいことである。2025年の就業形態をみると、自営業主、無給の家族従業者、臨時・日雇い労働者が合わせて76.3%を占め、常用雇用・給与所得者は23.6%にとどまる。直近では改善もみられるが、安定した賃金雇用が限られる構造はなお変わっていない。

自営業や家族従業、臨時・日雇い労働では、統計上は就業者であっても、仕事量や所得が安定しているとは限らない。とりわけ農村では、農業の季節性が強く、農閑期には仕事が減るため、年間を通じて十分な就労日数を確保できない世帯も多い。

こうした農村世帯の雇用と所得を下支えしてきたのが、マハトマ・ガンジー国家農村雇用保障制度(MGNREGA)である。同制度は、仕事を希望する農村世帯に年間100日を上限として単純労働の機会を保障するもので、完全失業者への対策というより、農閑期などに不足する就労日数と所得を補う安全網として機能してきた。MGNREGAで仕事を求めた世帯は、2022/23年度の6,906万世帯から2025/26年度には5,942万世帯へ減少したものの、なお約6,000万世帯に上る。

インド政府は2026年7月、MGNREGAを廃止し、新たな農村雇用保障制度「VB-G RAM G4」へ移行した。新制度では雇用保障日数が年間100日から125日に拡大された一方、財政負担の仕組みが大きく変更された。多くの州では、中央政府が定める州別の基準配分額の範囲内でも、費用を中央政府60%、州政府40%の割合で負担し、基準配分額を超える支出は州政府が負担する。旧制度が雇用需要を踏まえて中央政府から資金を配分する需要主導型の仕組みであったのに対し、新制度では州政府の財政負担と制度運営上の責任が強まった。

これに対し、労働組合や農民団体は、雇用保障が州の財政力に左右されかねないとして反発している。MGNREGAの復活を含む共同要求を掲げ、8月10日には全土で抗議活動を予定している。一方、新制度は雇用保障日数を拡大しつつ、州の関与を強め、歳出管理を厳格化する改革でもある。農村雇用の安全網を維持しながら、財政規律と州の責任をどこまで両立できるかが、制度改革の成否を左右するだろう。