ベッセント米財務長官が、イランとその貿易相手国を経済的に孤立させると表明した際、その発言は2001年9月11日の米同時多発テロ後にジョージ・W・ブッシュ元大統領が米国の同盟国に突き付けた警告を想起させるものだった。

ベッセント氏は20日のCNBCとのインタビューで「われわれは同盟国に『われわれの側に付くのか、それとも敵に回るのか』と迫るつもりだ」と指摘。「これは史上最大規模の協調的な経済孤立化になる」と強調した。

こうした二者択一を迫る発言は、イランとの取引を続ける国を罰したいという米政府の意向を強調する狙いがあった。ただ、国民の支持を得られていない戦争を終結させるための米国の選択肢が乏しくなっていることも浮き彫りにしている。

また、この表現は、米同時多発テロ後、約20年にわたって続いた米国の終わりの見えない戦争を予兆するものでもあった。トランプ大統領とヘグセス国防長官は、こうした終わりのない戦争を回避すると繰り返し約束してきた。

ベッセント氏は来週24日の記者会見で具体的な措置を発表するとしているが、米政府の本気度が最も問われるのは中国への対応だ。

中国はイラン産原油の最大の買い手だ。トランプ政権はこれまで、イランと中国の経済的なつながりに対抗する姿勢をほとんど示していない。習近平国家主席が来月訪米する予定であるほか、米中が不安定ながらも貿易休戦を維持していることが背景にある。

イランはすでに数十年にわたり厳しい制裁を受けている。米国は数カ月にわたって空爆を続けたものの、戦争の終結やホルムズ海峡の通航再開、保有する核物質の引き渡しを盛り込んだ合意をイランに受け入れさせるには至らなかった。現在はイランの港湾を海上封鎖している。

米政府にどのような有効な経済措置が残されているのかは不透明だ。中国を標的にするか、各国でイランと取引する小規模な事業者を次々と制裁対象にする以外に、目立った選択肢はない。一方、戦争の長期化に伴い、世界経済への打撃は拡大している。

非政府組織(NGO)「国際危機グループ」の副プログラムディレクター、アリ・バエズ氏は「制裁回避のノウハウを持つイランのような国に対し、米国には抜け穴のない制裁体制を執行するだけの余力がない」と指摘。「こうした政策が成果を上げるには数週間ではなく数カ月を要するが、大統領にはそれを待つ忍耐力がない」と述べた。

トランプ氏は19日、「金融機関、企業、空港、政府機関を通じて、いかなる形であれイランに生命線を提供することを認める国は、いずれも自らが甚大な経済的代償を負うことになる」と警告。「石油密輸、スワップライン、現金送金、両替業者、船籍登録、フロント企業──全てを今すぐ止める必要がある」と強調した。

原油に焦点を当てれば、中国が明確な標的になる。中国はイランの石油輸出の90%を購入している。米政府は2月の戦争開始以降、中国の一部の独立系製油所に制裁を科してきたものの、取引に資金を供給する中国の大手銀行を標的にすることは控えている。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のアナリスト、クリス・ケネディ氏は「ホワイトハウスは、この新たな経済戦争を中国との関係より優先する用意があるのか。そうすることを選べば、深刻な影響が生じる」と言及。今回の警告について「米国の選択肢が尽きつつあることを認めたものだ」と指摘した。

中国を標的にする決定を下せば、トランプ氏が習氏を迎えるわずか数週間前に緊張を悪化させるリスクがある。今回の訪米は、中国首脳にとって10年ぶりのワシントン訪問となる。また、11月の中間選挙を前に、中国の対抗措置が米経済に打撃を与える恐れも高まる。

中国政府はすでに、トランプ氏に対抗する意思を示している。最も顕著だったのはレアアース(希土類)の輸出規制を発表したことで、これを受けホワイトハウスは関税を巡る対立で譲歩を余儀なくされた。

中国外務省は、イランの貿易相手国に「経済戦争」を仕掛けるとのトランプ氏の威嚇を一蹴し、それでは地域の緊張を解決できないとの見解を示した。

オブシディアン・リスク・アドバイザーズのマネジング・プリンシパル、ブレット・エリクソン氏は「トランプ政権が何を見返りに提示しても、これほど重大な問題で習氏に公然と譲歩を迫るには不十分だ。米国の要求に応じることは、中国が誰と取引できるかを米国に決めさせることを自ら受け入れるに等しい。中国にそうした前例を作る意思は全くない」と語った。

イラン最大の収入源である原油輸出の阻止を狙うトランプ氏の政策は、すでに効果を上げている。イラン中央銀行のヘンマティ総裁は今週、国営テレビに「こうした状況下で、われわれの原油輸出は事実上停止している」と語った。

中国が最大の焦点となる一方、米国がイラン経済の孤立化をさらに進めれば、他の国々も対応を迫られることになる。

アラブ首長国連邦(UAE)はイランにとって最大の貿易相手国で、外国製品や外貨の主要な供給元でもある。ただ、UAEは今週、イランが自国領に弾道ミサイルを発射したとして、イランとの経済関係を全て断つと表明した。

ブルームバーグがまとめたデータによると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコは、中国に次ぐイラン製品の輸出先だ。米国の戦略的パートナーであるインドも、イランへの主要な供給国となっており、特に食品や医薬品を輸出している。

UAEやイラクの両替業者は、イランが原油輸出で得た資金を国内に還流させる役割も担う。代金は中国人民元で受け取ることが多く、これをイランが利用できる通貨に交換している。ただ、こうした業者を標的にするだけでは、イランに譲歩を迫るには不十分な可能性がある。

他国が米国の制裁強化に抵抗しなかったとしても、経済圧力が奏功するかには疑問が残る。イランと近隣諸国の貿易は、地理的な近さや歴史的に深いつながりを背景に何世代にもわたって続いている。アナリストらは、陸路を含むこうした貿易を米国が完全に断ち切れるかどうかは不透明だと指摘する。

クラリティ・コンプライアンス・コンサルティングの共同創業者で、米財務省の元当局者、クレア・オニール・マクレスキー氏は、成否は米国が打ち出す政策の具体的な内容と、その執行の徹底度に大きく左右されると指摘。「現時点では、広範な警告を公に発するだけでは、行動は変わりそうにない。トランプ政権が実際に何を標的にするのかを第三国に明確に示すには、外国の銀行や企業に対して実際に措置を講じる必要がある」と述べた。

原題:Trump Risks China Blowback With Plan to Isolate Iran’s Economy(抜粋)

--取材協力:Meghashyam Mali.

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