不動産サブセクターの動向
(1) オフィス
三鬼商事によると、2026年6月の東京都心5区の空室率は1.99%(前月比▲0.08ポイント)、平均募集賃料(月坪)は22,993円(前月比+0.65%)と、29カ月連続で上昇した。他の主要都市においても、空室率は低水準で推移しており、良好な需給環境を背景に、賃料も上昇基調を維持している。

三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2026年第2四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は38,259円(前期比+1.7%)と11期連続で上昇し、空室率は0.8%(前期比▲0.1ポイント)となった。同社は、「第3四半期にはまとまった面積の供給が予定されているが、いずれのビルも順調に内定が進んでおり、今後も引き締まった需給バランスが続く」としている。
また、日経不動産マーケット情報(2026年8月号)によると、東京ビジネス地区のオフィス成約賃料は、22エリアのうち、半年前との比較で5%以上上昇したエリアが15、2.5%以上5%未満上昇したエリアが6となった。「八重洲・京橋・日本橋エリア」の大型ビルの成約水準(月坪)は3.4万円から5.2万円程度で、上限は調査開始以来の最高水準に達した。同エリアで竣工予定の新築ビルは強気の賃料設定を継続しており、既存ビルの賃料にも影響を与えているとしている。
このように、東京のオフィス市場では、旺盛な需要と新築ビルの好調なリーシングを背景に、賃料は今後も上昇基調を維持する見通しである。

(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプで前年同期比プラスとなった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2026年第1四半期は、シングルタイプが+10.1pt、コンパクトタイプが+7.2pt、ファミリータイプが+16.1ptであった。

一方、総務省によると、2026年上期の東京23区における転入超過数は+31,737人となり、前年同期比▲27%減少した。2024年8月以降、23カ月連続で前年同月の水準を下回っており、都心回帰の動きは鈍化傾向にある。

(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターでは、百貨店の売上高が3四半期連続で増加した。商業動態統計などによると、2026年4-6月の小売販売額(既存店ベース、前年同期比)は百貨店が+5.7%、スーパーが+0.7%、コンビニエンスストアが+0.2%となった。6月単月では、百貨店が+2.7%(6カ月連続のプラス)、スーパーが▲2.3%(20カ月ぶりのマイナス)、コンビニエンスストアが▲0.1%(16カ月ぶりのマイナス)となっている。
また、観光庁のインバウンド消費動向調査によると、2026年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円(前年同期比+0.2%)となった。中国の消費額(同▲48.8%)が大幅に減少したことを受け、消費額の伸び率は前期に続き1桁台前半まで鈍化した。

ホテル市場では、中国からの訪日客数の減少などを受けて、延べ宿泊者数は4四半期連続で前年同期を下回った。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2026年4-6月累計の延べ宿泊者数は前年同期比▲5.6%(2019年同期比+1.5%)、このうち、日本人が同▲3.5%(同▲8.1%)、外国人が同▲10.5%(同+38.5%)となった。
また、2026年4-6月の訪日外国人客数は約1,040万人(前年同期比▲5.3%)となり、コロナ禍後にインバウンド需要の回復が始まって以降、初めて四半期ベースで前年割れとなった。中東情勢の緊迫化に伴う航空便の減便や燃油サーチャージの上昇も一部に影響したと考えられる。

物流賃貸市場では、首都圏の空室率は改善基調で推移している。シービーアールイー(CBRE)によると、2026年第2四半期の首都圏における大型マルチテナント型物流施設の空室率は7.8%(前期比▲1.4ポイント)となり、5四半期連続で前期比低下した。新規供給物件の竣工時稼働率は5割を超え、既存物件でも複数の大型成約がみられたことから、二次空室の消化が進んだ。2027年は新規供給が少ないことに加え、今後供給される物件のプレリーシングも進んでいることから、空室率は低下基調を維持する見通しとのことである。近畿圏の空室率は2.4%(前期比+0.2ポイント)となった。中心部では、まとまった空室を有する物件はなく、今後1年間に竣工予定の物件でもテナントの内定が進んでいる。
一方、一五不動産情報サービスによると、2026年4月の東京圏の募集賃料は4,400円/月坪(前期比▲2.2%)となり、8四半期連続で下落した。
J-REIT(不動産投信)市場
2026年第2四半期の東証REIT指数(配当除き)は3月末比▲2.3%下落した。業種別では、オフィスが▲2.8%、住宅が▲7.9%、商業・物流等が▲0.5%となり、これまで相対的にパフォーマンスが良好であった住宅の下落率が拡大した。6月末時点のバリュエーションは、純資産12.4兆円に保有物件の含み益6.5兆円を加えた18.9兆円に対し、市場時価総額は15.8兆円でNAV倍率は0.83倍、分配金利回りは5.0%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは2.3%となった。過去平均と比較すると、分配金利回り(過去平均4.3%)とNAV倍率(同1.1倍)は割安な水準にある一方、イールドスプレッド(同3.5%)は割高な水準となっている。

J-REITによる第2四半期の物件取得額(引渡しベース)は1,426億円(前年同期比▲27%)、2026年上期累計では6,866億円(同+19%)となった。アセットタイプ別の取得割合は、オフィスが36%、ホテルが28%、住宅が18%、商業施設が10%、物流施設が6%、底地ほかが2%となった。引き続き、オフィスとホテルへの投資意欲は旺盛であり、両セクターで全体の6割強を占めた。

2026年上期のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数(配当除き)は▲10.3%下落し、配当込みでは▲8.2%下落した。原油価格の上昇などに伴うインフレ懸念の高まりや、日本銀行による追加利上げを受けた市場金利の先高観を背景に、海外投資家を中心に売り圧力が高まり、3月中旬以降は下げ足を速めた。次に、市場規模を確認すると、上場銘柄数は58社と昨年末から変わらず、市場時価総額は15.8兆円(昨年末比▲10%)、運用資産額(取得額ベース)は24.5兆円(同+2%)となった。また、業績面では、市場全体の1口当たり予想分配金は、財務コストの増加を受けて昨年末比+0.3%とおおむね横ばいで推移した。一方、1口当たりNAV(Net Asset Value)は不動産価格の上昇を背景に同+1.7%増加し、過去最高を更新した。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子)
