■要旨
・国民年金保険料の納付率は着実に上昇し、改善傾向が継続である。
・未納防止に有効な口座振替等の「自動引去り」利用率が伸び悩み。
・若年層で拡大するスマホのコード決済に、納付促進の効果を期待。

先月までの動き

年金事業管理部会は、前回に続き日本年金機構の業務実績報告書の案について議論し、修正版を了承した。また、国民年金保険料の納付状況等について報告を受けた。資金運用部会は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の業務実績評価について議論し、厚生労働大臣への答申内容を決定した。

ポイント解説:国民年金保険料の納付率向上の現状と課題

年金事業管理部会では、国民年金保険料の納付状況が報告された。本稿では、国民年金保険料の納付に関する制度や現状、課題を確認する。

1|制度:国民年金保険料の対象者は、自営業の ほかパート労働者や無職など多様な人々

日本国内に住んでいる20~59歳の人は国民年金の加入者(被保険者)となり、将来は基礎年金を受給できる。国民年金の被保険者は第1~3号の3種類に区分されており、第2号は厚生年金の加入者(会社員や公務員)、第3号は第2号に扶養される配偶者(専業主婦(夫))で、それ以外は第1号となる。基礎年金に必要な費用のうち第2~3号の分は厚生年金制度から拠出されており、国民年金保険料を納付するのは第1号のみである。

第1号には第2~3号以外のすべての対象者を含み、近年の内訳は、雇用者(雇われている人)が38%、無職が34%で、自営業は25%にとどまっている。無職も対象であるため、本人や世帯の所得状況等によっては保険料の免除や猶予を受けられる。

2|現状:納付率の改善傾向は継続

保険料の納付期限は対象月の翌月末だが、2年以内なら遡及して納付できる。保険料の納付率(分母から免除者や猶予者を除外した率)は、納付対象月の当年度末でも2年後でも改善傾向が続いている。また、当年度末から2年後にかけての納付率の向上幅は、当年度末の納付率が65%程度だった約10年前は10%ポイント程度、当年度末の納付率が80%に近づいている近年でも8%ポイント程度で推移している。

なお、納付率の改善要因として免除率の上昇が指摘されることもあるが、近年の申請全額免除者の割合は17%程度で横ばいになっている。

3|課題:自動引去りの伸び悩み

行動経済学に基づく研究では、将来を軽視する人ほど国民年金保険料を納めない傾向が示されている。このように自分の意思では納めにくい場合は、窓口等での支払いではなく自動引去りを利用すると、納付が継続しやすい。近年は口座振替とクレジットカードを合計した利用率が伸び悩んでいるが、日本年金機構は口座振替等を周知するリーフレット等を送付しており、さらなる進展を期待したい。

なお、2023年2月からは、スマートフォンのアプリ等を使ったコード決済でも保険料納付が可能になっている。若年者を中心に利用が拡大しており、2023年度の286万月分から、2024年度は434万月分、2025年度は511万月分へと増加している。このうち、当年度分以外の納付は、2023年度の61万月分から、2024年度は95万月分、2025年度は101万月分へと増加しており、「納め忘れ」の通知を受け取った際に加入者が対応しやすい可能性がある。コード決済には、自動引去りの伸び悩みを補う効果も期待したい。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫 )