令和7年備蓄米放出における基本指針の変更
従来ルールと令和7年1月の転換
従来、備蓄米を放出するには、大凶作や連続不作で民間在庫が著しく低下する場合に、農林水産省の食糧部会で作柄、在庫、市場、価格等を議論し、農林水産大臣が放出を決定する必要がある。令和6年、すなわち2024年について、農水省は従来の備蓄米放出局面に当たらないと判断した。生産量が前年より増加しており、6月末民間在庫量も過少と判断できる水準でなかったためである。
ところが、市場の実感は、統計上の需給とずれ始めた。大手集荷業者の集荷量が前年より減少し、流通の目詰まりも重なったことで、店頭の米価格が高騰し始めた。そこで農水省は令和7年1月、基本指針を変更した。従来の供給不足の要件に加え、「主食用米の円滑な流通に支障が生じる場合」でも備蓄米の放出が可能になった。

買戻し条件付き競争入札
最初の放出は、買戻し条件付きの一般競争入札だった。令和7年2月の売渡し概要では、令和6年産を中心に令和5年産も加え、21万トンを販売予定とし、初回は15万トンとされた。対象は年間玄米仕入量5,000トン以上の集荷業者等である。買受者は同等同量の国内産米を一定期間後に政府へ売り渡すことを誓約する必要があった。買戻し期限は当初、1年以内だった。
需給がひっ迫する中で、なぜ買戻し条件を付けたのか。政府資料を確認した限り、理由は明確に示されていない。備蓄水準を将来的に100万トン程度へ戻す意図があった可能性はある。しかし市場に対しては、「将来、政府が買う」という大きな需要を示唆することになる。
買戻し期限の延長と随意契約
令和7年5月の「米の流通安定化に向けた対策パッケージ」では、買戻し期限が原則1年以内から原則5年以内へ延長された。同時に、令和7年産の備蓄米買入れについても、需給環境が大きく変化しなければ当面買入れを中止し、買戻しも行わないとされた。買戻しの運用は、短期で同量を戻す方式から、需給を見ながら中長期で判断する方式に変更された。
その後、政府は随意契約による売渡しに移行し、買戻し条件を付与しない契約形態により、小売業者等に指定価格で売り渡した。わずか数か月の間に、令和7年の備蓄米放出運営は、「競争入札・買戻し条件付き」から、「買戻し期限延長」「令和7年産米の買入停止」「随意契約・買戻し条件なし」と矢継ぎ早に変化した。最終的な放出規模は、買戻し条件付き売渡し31万トン、随意契約による売渡し約28万トン、加工原材料用への売渡し5万トンを合わせた64万トンである。