【記事の要旨】
・米国発「ハンプトン・イン」は無料朝食で中価格帯市場を開拓。
・資産を持たないビジネスモデルで、ヒルトンの最大収益源に成長。
・成功の秘訣は「一貫した安心感」。今後は中国など世界展開を加速。
想像通りの「普通のホテル」が、世界で最も儲かるホテルに
赤い縁取りの看板に、おなじみのベージュ色の箱型の建物。中に入れば、パリッとしたシーツが敷かれたベッド、自分で焼くことができるワッフルメーカー、そして分かりやすい場所にある照明スイッチが出迎えてくれます。フロントには「100%の満足を保証する」と書かれた小さなプレートが飾られ、世界中どこへ行ってもその見た目やサービスはほとんど変わりません。

アメリカの風景にすっかり溶け込んでいるこのハンプトン・イン(Hampton Inn)は、誰もが「想像通り」と口を揃える、いわばごく普通のホテルです。しかし、この一見何の変哲もないホテルチェーンが、世界屈指のホテルグループであるヒルトンの屋台骨を支え、最も利益を生み出す存在へと成長を遂げました。彼らはどのようにして、業界の頂点へと上り詰めたのでしょうか。
ホテル業界の二極化と「中価格帯」の誕生
時計の針を1950年代から1970年代へと巻き戻すと、当時のアメリカのホテル市場は大きく2つに分かれていました。一つは、豪華なレストランや大きな屋内プールなど、あらゆる設備を備えた「フルサービスホテル」。もう一つは、道路沿いに建つ安価で部屋のみを提供する「モーテル」です。
しかし、1980年代に入ると中間層の旅行者が急増し、人々のニーズに変化が訪れます。誰もが市街地の高級ホテルや過剰な設備を求めているわけではありませんでしたが、かといって、建設から20〜30年が経過し古びてしまったモーテルに泊まることも敬遠し始めました。

この市場の空白を突く代替案として、1984年にテネシー州メンフィスで誕生したのがハンプトン・インの第1号店です。彼らが掲げたコンセプトは、「清潔・シンプル・スマート・快適な睡眠と無料の朝食を手頃な価格で提供する」というものでした。余計なものを削ぎ落とすことで品質を維持し、リーズナブルな価格を実現したこのホテルは、開業当初から稼働率100%という大成功を収めました。
