単身化~ひとりでこなす家事と、尽きないデジタルの波
構造変化の二つ目は、単身世帯の増加です。
一人暮らしは、時間をすべて自分のために使える自由な暮らしのように見えます。しかし実際には、食事の準備も、洗濯も、買い物も、家の管理も、すべてをひとりでこなさなければなりません。
さらに、かつての一人暮らしに比べ、今の単身者を取り巻く環境は大きく変わっています。SNSや動画配信、オンラインゲーム、常時接続のコミュニケーションなど、時間を向けたいものは際限なく増え続けています。家事に必要な時間が大きく減ったわけではない一方で、可処分時間を奪い合う「競合相手」が格段に増えています。
若年単身者が「自炊する時間も気力もない」と感じるのは、単なる怠惰ではなく、限られた時間の中で何を優先するかという選択の結果とも言えるのかもしれません。
一方、高齢単身者は体力的な制約の中で暮らしを維持しており、以前は難なくできていたことが時間と手間のかかる作業へと変わっていきます。
単身世帯は現在、全世帯の約4割を占めるまでに増えており、その増加傾向は今後も続く見込みです。なお、かつて「標準世帯」と呼ばれた、夫が働き妻が家庭を担う、子ども2人からなる世帯は、今やごく少数派となっています。
こうした変化は消費行動にも表れています。総菜や弁当、冷凍食品といった中食市場の拡大に加え、小容量商品やサブスクリプションサービス、レンタルサービスなども広がっています。その背景には、単に人数が少ないというだけではなく、限られた時間の中で暮らしを効率的に回したいというニーズがあります。
単身化は、家族内で分担されていた時間や手間を個人に集約させることで、「時間を買う消費」の必要性を高めています。共働き化と同様に、時間制約社会を後押しする大きな構造変化の一つと言えるでしょう。
「時間はあっても、余力がない」という制約
三つ目は、高齢化の進行です。高齢者は時間的に余裕があると思われがちですが、必ずしもそうではありません。年齢を重ねるにつれて、同じ家事でも以前より時間や労力がかかるようになります。単身に限らず、通院や介護、体力の衰えによる家事効率の低下など、「時間はあっても、使える体力・気力が限られる」という新たな制約に直面している人は少なくありません。重い荷物を持って買い物に行くことが難しくなり、長時間の料理が負担になる――そうした状況は、消費のあり方に直接影響します。
宅配サービスやネットスーパー、調理済み食品への需要が高齢層でも着実に広がっているのは、こうした実態を反映しているのでしょう。時間制約は、忙しい現役世代だけの問題ではありません。高齢化の進展によって、「時間はあるが、それを十分に活用する余力がない」という制約も広がっており、時間制約社会は高齢者を含む社会全体の現象となっています。