ファイナンシャルマネジメントの第1原則は、子どもたちにも教える格言と同じだ。卵を一つの籠に盛るな。分散されたポートフォリオは投資の基本中の基本だが、世界は今、その原則を無視した代償を払っている。

イラン戦争は、石油や天然ガスへの過度な依存が、経済面でも安全保障面でもいかに有害かを浮き彫りにした。ホルムズ海峡という狭い水路を通る化石燃料の輸送が妨げられることで、テロ支援国家が各国の経済や家計に深刻な損害を与えることが可能になっている。

人々はガソリンの給油や電力利用、事業運営のために、より多くの費用を支払っている。

近代史の大半において、世界が化石燃料に依存してきたことには十分な理由があった。化石燃料は代替不可能だったからだ。石炭と石油は産業革命を支え、その後の繁栄をもたらし、生活水準を記録的な勢いで押し上げた。

そうした恩恵を得るため、各国は化石燃料の燃焼による深刻な健康被害をおおむね受け入れてきた。現実的には、経済的な選択肢がなかったのである。

だが、今は違う。太陽光発電と風力発電の技術が大きく進歩したことで、クリーンエネルギーは現在、世界のほぼ全ての地域で化石燃料よりも安価に電力を供給できるようになった。さらにバッテリーテクノロジーの急速な発展により、日照や風がない時でもクリーンエネルギーを活用できるようになっている。

その結果、風力と太陽光は現在、世界の発電量の約14%を占めている。今世紀初頭には1%未満だったことを考えれば大きな伸びで、その比率はなお上昇を続けている。

昨年は米国を含む世界全体で新たに追加された発電設備容量の90%をクリーンエネルギーが占めた。これは、米連邦政府が化石燃料を支援しクリーンエネルギーの普及を阻害することを目的とした政策を進める中で実現したものだ。

実際、今年5月に米国で歴史的な節目が訪れた。米国の電力供給に占める太陽光発電の割合が12.8%となり、石炭の12.2%を初めて上回った。

危機に学ぶ

世界各国で政策的な逆風はあるものの、エネルギー源の分散化は進んでいる。ただ、スピードが遅過ぎる。石油や天然ガスの供給ショックはいまなお大きな経済に混乱をもたらしている。

大気汚染は毎年800万人の命を奪い、さらに数百万人を病気にしている。そして化石燃料の燃焼に伴う排出による気候変動は、着実に危険性と被害を増している。それが信じられないというなら、ニュースを見ればよい。

米西部ではここ4半世紀にわたり大規模な長期干ばつが続いている。科学者らによれば、これは過去1200年で最悪の干ばつであり、温室効果ガスの排出がその要因となっている。

今年は特に深刻で、人々の暮らしを脅かしている。山岳地帯であれ平原であれ、沿岸部であれ砂漠地帯であれ、小さな町であれ大都市であれ、気候変動の破壊的な影響を免れる地域はない。暴風雨や洪水、山火事、熱波はいずれも、より致命的かつ高コストなものになっている。

良い知らせもある。分散化を妨げる障害を取り除けば、こうした被害から身を守る力を高められる。例えば、官民のパートナーシップを推進すれば、クリーンエネルギー導入時の初期コストを引き下げることができる。

より進化しかつ相互接続性の高い送電網への投資は、出力変動の問題を解消し、消費者の負担をさらに軽減する助けとなる。市場を人為的に化石燃料に傾斜させている政策や補助金を廃止すれば、クリーンエネルギーはより公平な競争条件を得られる。

こうした恩恵の実現を後押しするため、ブルームバーグ・フィランソロピーズは、クリーンエネルギー産業を支援する新たな取り組みを開始する。

対象は、エネルギー需要が最も急速に拡大している途上国だ。成功は不可能だと考える人々に伝えたい。過去15年間で、米国の石炭火力発電所の70%以上が閉鎖されたか、閉鎖計画を策定したか、あるいはクリーンエネルギーへ転換した。

欧州でもその割合は60%に達する。また、28カ国が石炭をすでに全面廃止したか、あるいは廃止を公約している。少し前なら想像もできなかったことだ。

より安価でクリーンなエネルギーの開発を加速させれば、人々の健康状態の改善につながり、戦争に伴う影響を抑え、エネルギー料金を引き下げ、良質な雇用を創出できる。

また、石油輸出国機構(OPEC)による1973年の石油禁輸以来、断続的な石油不足がもたらしてきたインフレや失業、工場閉鎖といった痛みを伴う経済ショックから国民を守ることにもつながる。

イラン戦争によるエネルギー危機は、各国が原子力発電を含むクリーンな代替エネルギーを活用し、エネルギーポートフォリオの分散化を進める契機となるべきだ。

6月28日まで開催されるロンドン気候行動週間は、この課題と、それに取り組むことの利益について理解と支持を広げる好機となる。断固とした行動を取れば、今回のエネルギー危機はついに、より多くの卵をより良い籠へ移す機会になるかもしれない。

(マイケル・ブルームバーグ氏はブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創業者で、過半数株式を保有しています。このコラムの内容は個人の意見です)

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原題:Energy Crisis Calls For Diversification: Michael R. Bloomberg(抜粋)

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