・インフレ経済への移行を背景に日銀が利上げ、中小企業の倒産は増加

・物価高と金利上昇により、住宅ローンや新NISAで家計が二極化

・リスキリングなどの政府支援と、個人の自立的な生活防衛が不可欠

30年ぶりの「金利と物価がある世界」への回帰

長年にわたりデフレと超低金利環境が常態化していた日本経済は、大きな転換期を迎えている。2020年代中盤、コロナ禍以降のグローバルな供給制約や円安を契機とした「コストプッシュ型インフレ」は、構造的な労働力不足を背景とした「ディマンドプル型インフレ」へとその性質を変化させつつある。これに伴い、日本銀行は長年続けたマイナス金利政策を解除し、2026年6月には政策金利を1.00%と約30年ぶりの水準に引き上げるなど、段階的な利上げを敢行してきた。

インフレがもたらすマクロ経済と企業への影響

物価の上昇は、経済の「好循環」を生む起爆剤になり得る一方で、そのスピードや中身によって企業の格差を拡大させる要因となる。

インフレ経済の本質的なメリットは、企業が適切な価格転嫁を行うことで「売上」が増加し、それが企業の投資や賃上げ原資に回ることにある。デフレ期には「安さ」が第一とされたが、物価がマイルドに上昇する環境下では、企業は商品やサービスの付加価値を価格に反映しやすくなる。これにより、国の経済規模を示す名目GDPが拡大し、税収の増加や、過去の固定債務の「実質的な目減り」という形で財政面にも好影響を与える。

しかし、現在のインフレは、原材料費や人件費の急激な高騰の側面を強く残している。大企業やブランド力のある企業は価格転嫁に成功し業績を伸ばす一方、下請け構造の末端にある中小・零細企業は、コストを十分に価格転嫁できず、収益が圧迫される「インフレの二極化」が深刻化している。また、インフレに追いつけない企業では、労働力不足と相まって「物価高倒産」や「人手不足倒産」が増加しており、産業の強制的な淘汰が進むリスクも孕んでいる。