・共働き化・単身化・高齢化に伴い、日本は「時間制約社会」へ移行中
・「時間を買う消費」が拡大し、企業の福利厚生や雇用モデルも変容
暮らしの制約はお金と時間
6月は、1年で唯一、祝日のない月です。5月の連休が終わると、次の祝日の7月中旬まで約50日間、ひたすら平日が続きます。早めの夏休みを取る人もいるかもしれませんが、そうでない場合、働く人にとっては息をつく間もなく日々が積み重なる季節です。「時間が足りない」――そんな感覚が広がりやすいのも、この時期ならではかもしれません。
もっとも、「時間がない」という感覚は、6月だけの話ではありません。今やそれは、特定の誰かの嘆きではなく、社会全体に広がる共通の実感になりつつあるのではないでしょうか。
暮らしを左右する制約には、大きく「お金」と「時間」があります。これまで消費を考える際には、所得や物価といったお金の制約が主な関心事でした。しかし近年は、そこに時間の制約が強く重なりつつあります。十分な所得があったとしても、使う時間がなければ消費はできません。逆に、時間を節約するためにお金を使うという行動も広がっています。そして、こうした行動は、もはや一部の忙しい人だけのものではありません。
私たちは今、「時間制約社会」とも呼べる時代に入りつつあります。その背景には、三つの構造変化があります。
共働き化~家庭の「時間の担い手」が手薄になる
一つ目は、共働き世帯の増加です。1990年代半ば、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回りました。それから約30年、今や共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上に増えています。
かつては、夫が主に所得を担い、妻が家事や育児など家庭内の役割を担う世帯が一般的でした。しかし、共働き化の進展によって、家庭の外で働く時間は増える一方、家庭内で暮らしを支える時間を確保することは以前より難しくなっています。家事・育児・介護といった暮らしの営みを回すための時間は依然として必要ですが、それを担う余裕は縮小しているのです。
さらに、共働きの「中身」も変化しています。以前はパートタイムで働く妻が中心でしたが、近年は夫婦ともにフルタイムで働く世帯が増えています。総務省「労働力調査」によると、夫婦ともに週35時間以上働く世帯は、2014年(392万世帯)から2025年(503万世帯)の10年余りの間に約110万世帯増加しました。
もちろん、共働き化は家計の安定や女性の就業機会の拡大という点で大きな意義があります。一方で、家庭内で暮らしを支えるために使える時間は以前より限られたものになっています。共働き化の進展は、所得を生み出す力を高める一方で、家庭内で暮らしを支える時間を希少な資源へと変えているとも言えるでしょう。
こうした変化は消費行動にも表れています。調理済み食品や冷凍食品、ミールキット、家事代行サービスなどの利用が広がる背景には、単なる利便性志向だけではなく、限られた時間を効率的に使いたいというニーズがあるでしょう。共働き化は、「時間を買う消費」を広げる原動力となり、時間制約社会を象徴する変化の一つと言えます。
