女性の職域拡大はどの職業で進んだか

1)技術職に女性は進出したのか

次に、具体的に女性割合の増加が著しい職業が何かを、国勢調査の「専門的・技術的職業従事者」の小分類から見ていきたい。ここでは「技術職」と「専門職」に分けてみていく。まず技術職をみると、最も典型的な「男性の職場」だったと言えるのが「建築」や「土木・測量技術者」である。1995年にはいずれも女性割合が5%未満だったが、2020年には「建築技術者」は1割を超えた。

建設業は、少子高齢化によって、いち早く人手不足が顕在化した業界でもあり、2010年代から官民共同で、建設現場に女性用のトイレや更衣室を設置して労働環境改善を進めたり、業界団体が建設業で活躍する女性を「けんせつ小町」と銘打ってイメージ刷新に取り組んだりと、女性の入職を促進してきた。これら官民共同の取組の成果が徐々に表れてきたと言えるだろう。建設業は長らく典型的な「男性職」とみなされてきたが、人手不足への対応と働き方改革を背景に、女性を新たな担い手として位置付ける方向へ業界全体が転換してきた。その結果、建築技術者では女性割合が1割を超えるまでに上昇した。一方、「土木・測量技術者」は依然5.5%にとどまり、伸び悩んでいる。

デジタル関係では、1995年の「情報技術者」は約8万人で女性割合は13.7%だった。2020年には、旧「情報技術者」を分割した「システムコンサルタント・設計者」と「ソフトウェア作成者」を合わせると約17万人で、女性割合は16.6%である。就業者数は倍増したが、女性割合は小幅の上昇率に留まっている。

建設分野では女性割合が大きく上昇したのに対し、IT分野では就業者数の増加ほどには女性割合が上昇していない。このことは、人手不足だけでは女性進出は自動的には進まず、労働慣行やロールモデルの不足、理工系進学におけるジェンダー差など、供給側・需要側双方の課題が残っていることを示唆している。女性にとっても、時間や場所に縛られずに柔軟に働きやすいメリットがあり、所得向上も期待できるとして、国も女性デジタル人材育成を国家戦略としており、今後の増加が期待される。

2)専門職に女性は進出したのか

次に、技術職以外の専門職についてみていくと、「男性の職場」に女性が進出してきたことがよく分かる。「医師」は1995年の14.2%から2020年には24.4%となり、性別による専門科や階層の偏りを別にすれば、人数の上では、医師のうち4人に1人は女性となった。1995年に1割に満たなかった「裁判官、検察官、弁護士」や「公認会計士、税理士」も、ともに2割弱に増えた。新聞記者や雑誌記者などの「記者、編集者」も女性が3割弱から4割強へと増加した。

研究者の領域でも、大学や民間の研究所などでいわゆる理系の研究に従事する「自然科学系研究者」は過去25年間で約1割から2割に、政治経済など文系の調査研究に従事する「人文・社会科学系等研究者」は約2割から約3割へと増えた。大学教授など学生への講義を担当する「大学教員」も、約2割から3割に増加した。

また、1995年には独立した小分類が無かったため、25年間の変化は分析できないが、2020年には「社会保険労務士」が7,210人で女性割合33.1%と3割を超えている。経営コンサルタントや証券アナリストなどを含む「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」は14,140人で女性割合17.1%である。女性はまだ少数派ではあるものの、経営、金融、保険分野の発展に伴って、このフィールドの高度人材としても女性が増えている。

以上みてきたように、建築技術者、医師、法曹、公認会計士、研究者など、かつては男性が多数を占めていた専門職で女性割合の上昇が確認できる。もちろん職業によって程度の差はあるものの、専門職における女性の増加は、女性が従来の女性職に集中した結果というよりも、「男性職」とされてきた職域への進出によってもたらされた側面が大きい。1999年の男女雇用機会均等法改正以降、採用機会の均等化と女子の高学歴化を背景に、男性職への女性進出が着実に進んできたことがうかがえる。

3)「女性の職場」に男性は進出したのか

逆に、従来の「女性の職場」では、女性割合が過去25年間でどのように変化したのかも確認しておきたい。「看護師(准看護師を含む)」は女性割合が96.5%から92.3%と4.2ポイント減、1995年に女性が100%だった歯科衛生士は0.2%ポイント減、「保育士」は2.3%ポイント減など、女性割合の減少幅はわずかである。「男性の職場」に女性は進出したが、「女性の職場」に男性は進出しておらず、性別職域分離の解消は一方向的に進んできたことが分かる。すなわち、日本の職業構造は男女双方が多様な職業を選択できる状態に近づいているというよりも、女性側の選択肢が広がることで変化してきた側面が強い。女性割合が圧倒的に高いこと自体が悪いという訳ではないが、これらの職業が低賃金にとどまっていないか注視していく必要があるだろう。