米当局は寄生バエの新世界ラセンウジバエ(NWS)がテキサス州の牛で約50年ぶりに確認されたことを受け、緊急対策を加速させている。

メキシコでの最近の流行が米国へ広がるのを防ぐために取り組んできたテキサスの家畜衛生当局にとって後退となる。また、すでに厳しい状況に置かれている畜産業界にとっても不穏な展開だ。

ロリンズ農務長官はNWSを国内から排除するため、米国は「できる限りのことをする。10億ドル(約1600億円)余りを投じる」と述べた。

NWSとは何か

NWSは、恒温動物の傷口に産卵する寄生バエだ。ふ化した幼虫は、生きた組織の中へ木材にねじが食い込むように潜り込み、この特徴が名称の由来となっている。

幼虫は深刻な損傷を引き起こし、治療されなければ寄生された動物が死に至る可能性もある。寄生対象の大半は牛や野生動物、ペットだが、ヒトにも寄生し得る。

治療では通常、幼虫を除去し、傷口を消毒する。早期に発見されれば治療は可能だが、動物から数百匹ものウジを取り除く作業は困難を伴う場合がある。

NWSの何が懸念されているのか

国連食糧農業機関(FAO)によると、NWSは急速に広がる可能性があり、治療されなければ成長した家畜であっても最短10日で死に至ることがある。

現在、牛の寄生事例はテキサス州南部の厳重監視地域にとどまっているが、農務省はその地域から離れた場所で犬とヤギへの寄生も確認している。これにより寄生拡大への懸念が高まっており、牧場経営者や食肉加工業者に壊滅的な影響を及ぼす恐れもある。

農務省が2025年に分析したところ、1970年代に米国の畜産業へ深刻な打撃を与えた流行と同規模のNWS流行が発生した場合、テキサス州経済だけでも最大18億ドルの損失が生じる見込みだ。

ロリンズ長官は、この試算は長期間にわたり牛の移動が全面停止するような全面的な寄生拡大を前提としていると説明した。

今回の寄生確認は、米国の牛肉業界にとって厳しい時期に発生した。長期的な干ばつと飼料コストの高騰により、全米の牛飼養頭数は75年ぶりの低水準となっており、赤身肉の小売価格は急騰している。

牛肉価格は政治問題にもなっており、トランプ大統領は消費者負担を軽減するための大統領措置を講じている。牧場経営者や食肉加工業者にさらなる問題が生じれば、価格が一段と上昇しそうだ。

NWS流行は一般的なのか

米国固有のNWS個体群は、1960年代に大規模な政府主導の駆除活動によってほぼ根絶された。この取り組みでは、不妊化した雄バエ数百万匹を野外へ放ち、雌と交尾させることで繁殖を阻止した。

しかし、1970年代前半、NWSは再び出現し、テキサスやカリフォルニア、アリゾナの各州を含む米国南西部全域へ急速に拡大した。USDAの分析によると、この流行によりテキサス州では家畜の死亡や治療費などを含め年間最大3億7500万ドルの損失が発生した。

2025年には、中米から米国に入国したヒトへの寄生例が報告された。ただし、米本土の動物でNWSが確認されたのは、フロリダ州でシカの集団寄生が発生した2016年が最後だった。

NWSは他の地域でも問題となっているのか

NWSは中南米の一部地域で深刻な問題となっている。2023年にパナマとコスタリカで発生した流行以降、メキシコ全土へ拡大している。

米疾病対策センター(CDC)によると、6月2日時点でメキシコおよび中米全域の動物で17万1700件超の寄生例が報告されている。NWSの北上を受け、米当局は流行防止策を強化している。当局はこれまで繰り返し、数カ月単位で国境を越える牛の輸入を停止してきた。

政府はまた、不妊化したNWSを繁殖・放出する施設の建設も進めている。テキサス州ではアボット知事が災害宣言を発令し、当局に追加権限を付与して対応に当たっている。

NWSはヒトにも影響するのか

米国内で一般市民に寄生するリスクは非常に低い。ヒトへの寄生はまれで、多くはNWSが生息する中南米やカリブ海地域で発生している。

CDCによると、屋外や家畜の周辺で過ごす機会があり、傷口がある旅行者が最も高いリスクにさらされる。NWSの再侵入を防ぐため、米国と地域の協力国はパナマとコロンビアの間に恒久的な不妊バエ防衛線を維持している。

今後どうなるのか

米政府は当面、さらなる拡大リスクの封じ込めに力を注ぐ。農務省は寄生確認地点の周囲20キロメートルに検疫区域を設定し、監視活動と動物移動の制限を実施する。政府はまた、不妊化したハエの放出を加速し、繁殖を阻止する方針だ。

原題:What Is Screwworm and Why Is It a Cause for Concern?: Explainer(抜粋)

--取材協力:Ilena Peng.

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