迷惑行為動画が炎上する必然性
BeRealによる炎上が他のSNS発端の炎上と違うところは、投稿者が炎上を意図していないということだ。筆者は過去に「なぜ、炎上は繰り返されるのか-迷惑動画投稿がされてしまう構造を考える」というレポート内で炎上が発生する構造について論じたが、多くの場合、コミュニティにおける親密圏が昨今の迷惑行為動画の投稿に繋がっていると考えている。信頼や依存度が高く仲のいいグループほど、親密圏は狭くなり、その仲間内でしか盛り上がることができないようなトピックで盛り上がったり、そのグループにいない他人を誹謗中傷したり、秘密を話したり、迷惑行為を含む悪ノリなども投稿されがちだ。これは、現実社会における内輪ネタ・内輪ノリの延長なのであるが、内輪ネタや悪ふざけは、ある種のコミュニティにおける笑いや円滑なコミュニケーションをとるためのエンターテインメントであるため、仲間のバカげた行為で盛り上がれば、自分も何か面白いことをしようという気持ちが駆り立てられ、次第にその行為はエスカレートしていくことになる。
インスタントで技巧を凝らしていない動画であっても、面白ければ(それが万人にとって面白いかは別の話)バズってしまう現在の消費文化において、「迷惑行為=行き過ぎた普通ではない行為=普通ではないから面白い」という単純な思考の中で、内輪ネタとしての迷惑行為が投稿もしくはグループラインなどでシェアされていくのである。醤油ボトルをなめたり、コンビニで販売されているおでんを素手で触ったりする行為は、当事者自身もそれが常識から逸脱した迷惑行為であることを認識している場合が多い。こうした確信犯的な迷惑行為が撮影・投稿され、結果として世間の目に触れることで、炎上や批判の対象となるのである。
自身の投稿が情報漏えいにつながってしまう偶然性
SNSにおける投稿は、何を撮影するか、いつ投稿するか、誰に見せるかは投稿者自身が決定しており、その内容には投稿者の意思が強く反映されている。
しかし、BeRealの場合は必ずしもそうではない。ユーザーはランダムな時間に届く通知に従い、その場で写真を撮影することが求められる。投稿内容を事前に準備したり、撮影場所やタイミングを自由に選んだりすることは難しく、通知が届いた時点の状況がそのまま共有される。結果として、本人に情報漏えいの意図がなかったとしても、たまたまそこにホワイトボードやPC画面、社員証、顧客情報などがあって、たまたまそれが偶然映り込み、炎上や情報漏えいにつながる可能性が生まれるのである。
言い換えれば、従来のSNS炎上が「何を投稿するか」という必然性によって生じるケースが多かったのに対し、BeRealの炎上は「その瞬間に何が写り込んでしまうか」という偶然性によって引き起こされる側面が強い。この偶然性こそがBeRealのゲーム性の中核でもある。ユーザーは次にいつ通知が来るか分からないからこそ日常を共有する面白さを感じる。しかし同時に、その仕組みは「どこで通知を受けるのか」をコントロールできないというリスクも内包している。そのため、BeRealではサービスの普及当初から、授業中や勤務中など『どこで撮影するのか』がたびたび社会的な議論の対象となってきたのである。