なぜ親密圏の外に流出してしまうのか
もっとも、こうした投稿の多くは不特定多数に向けられたものではなく、仲間内で共有されることを前提としている。炎上はその内容が意図せず外部へ流出することで発生する。この構造は、かつての「バイトテロ」と大きく変わらない。親しい仲間だけで構成されたコミュニティでは非常識な行為が問題視されにくく、「仲間が外部に漏らすはずがない」という信頼感も生まれる。そのため、炎上のリスクを認識しながらも「自分は大丈夫だろう」と考え、不適切な投稿を行ってしまうのである。実際に表面化する事例は氷山の一角に過ぎず、内輪のコミュニティ内では同様の行為が日常的に消費されている可能性もある。
SNSは公開範囲を設定でき、ユーザー自身が「誰に見せるか」を選択することができる。しかし、そのことがかえって油断を生む側面もある。ユーザーは自ら設定した公開範囲や人間関係を信頼し、「この投稿は仲間内から外には出ない」と考えがちだ。しかし、本人以外が投稿をスクリーンショットか画面録画で保存すれば、情報は簡単に流出してしまう。以前はBeRealではスクリーンショットを撮ると本人に通知される機能があったがが、今はないため、知らないうちに本人は親しいと感じている誰かが投稿を保存し、公開範囲を超えて流出させてしまえるのだ。
なぜ親密圏の外に流出させてしまうのか
例えば、投稿を見た友人が「面白いから見てほしい」と別の人へ共有するケースや、その行為を問題視した人が正義感から外部へ拡散するケースがある。また、オンライン上では必ずしも全員が強い信頼関係で結ばれているわけではなく、投稿者を積極的に擁護しようと思わない人もいる。さらに、投稿者に対する反感や嫉妬、あるいは他人の失敗を見て快感を得るシャーデンフロイデ(他人の不幸を喜ぶ感情)が拡散の動機となることもある。
実際、西日本シティ銀行の事案では、数年前に投稿されたBeRealの投稿が第三者によって掘り起こされ、SNS上で拡散された。これはその投稿を見た人が24時間以内に保存し、ずっと保管していたということ意味しており、保存された投稿が何らかのタイミングで意図的に公開された可能性も示唆している。
つまり、「自分が選んだ相手だけが見ている」「公開範囲は自分でコントロールできている」という感覚は幻想に過ぎない。たとえLINEのような1対1のコミュニケーションであっても、スクリーンショットや転送によって内容が流出する時代である。インターネット上に一度でも投稿した情報は、いつか親密圏の外へ流出し、不特定多数の目に触れる可能性がある。その前提に立って情報発信を行う必要があるだろう。
併せて、現在では、投稿内容が親密圏の外へ流出するハードルは極めて低い。フォロワー数の多いインフルエンサーやまとめアカウントに情報が渡れば、一気に拡散が始まる。さらに、一度注目を集めた投稿は転載や再投稿を繰り返しながら複製され、XだけでなくYouTubeやTikTokなど他のプラットフォームにも波及していく。その過程でマスメディアや企業の目にも留まり、やがて社会的な問題として認識されることになる。
