2026年春、西日本シティ銀行をはじめ、BeRealをきっかけとした情報漏えい事案が相次いだ。従来のSNS炎上では、迷惑行為や不適切な発言を意図的に撮影・投稿するケースが多かったのに対し、BeRealでは本人に悪意や情報漏えいの意図がなくても、勤務中や授業中に撮影した写真へ機密情報や個人情報が偶然映り込み、炎上へ発展するという特徴がみられる。

本レポートでは、従来のSNS炎上を「必然性」、BeReal炎上を「偶然性」という観点から整理するとともに、その背景にある親密圏型コミュニケーションや「撮って出し」文化について考察した。また、限定公開や24時間で消える仕組みが利用者に安心感を与える一方、スクリーンショットや画面録画によって容易に保存・拡散される実態についても論じている。

「ありのままの日常」を共有するSNS

株式会社西日本シティ銀行下関支店(山口県下関市)の執務室内で撮影されたBeRealの投稿に、顧客7人の氏名や営業目標が記載されたホワイトボードが映り込んでいたことが発覚した。その内容は第三者によって画面録画され、X(旧Twitter)などで拡散された。

BeRealは2020年に公開されたフランス発のSNSアプリである。1日1回ランダムな時間に通知が届き、ユーザーは2分以内に自身と周囲の様子を撮影して共有する仕組みを持つ。インカメラとアウトカメラで同時に撮影され、事前に用意した画像の投稿や加工も基本的にできないことから、「ありのままの日常」を共有するSNSとして若年層を中心に利用が広がってきた。西日本シティ銀行は2026年4月30日、本件について謝罪文を公表している。

同様の事案は他にも発生している。仙台市では2026年4月、20代の女性教諭が校内システムの画面を表示したパソコンを撮影しBeRealに投稿したことで、学校名や同僚教諭の氏名が写り込む事案が発生した。また、石川県小松市の建設機械部品メーカー・森康でも、社員によるBeRealの不適切な利用によって社内情報や関係者情報が外部に公開される事案が確認されている。これらの事例は業種や職種を問わず発生しており、BeRealが単なる若者向けSNSではなく、企業や組織にとっての新たな情報漏えいリスクとして認識される契機になったといえるだろう。

もっとも、従業員によるSNS上の不適切投稿は今に始まった話ではない。アルバイト従業員が職場での迷惑行為を撮影・投稿し、企業に大きな損害を与える「バイトテロ」という言葉が広く使われ始めたのは2013年である。それから10年以上が経過した現在も、従業員による不適切投稿に加え、消費者自身が小売店や飲食店での迷惑行為を撮影し、SNS上で炎上する事例は後を絶たない。

こうした炎上によって、当事者が高額な損害賠償を請求されたり、投稿内容が「デジタルタトゥー」として半永久的にネット上に残り続けたりするリスクは広く知られている。それにもかかわらず、なぜ今あらためてBeRealをきっかけとした不祥事が相次いでいるのだろうか。BeRealによる情報漏えいや不適切投稿は、他のSNSにおける炎上事例と何が異なるのだろうか。