キオクシアホールディングス株に新たなリスクが浮上している。米国で同社株を対象とした個別株レバレッジ型上場投資信託(ETF)の上場準備が進んでおり、値動きがさらに激しくなる可能性がある。

米証券取引委員会(SEC)の資料によると、キオクシアHDの株式や米国預託証券(ADR)などの日次騰落率の2倍もしくはマイナス2倍の値動きを目指すレバETFが少なくとも9本、上場に向けた登録を申請している。実現すれば、日本企業にひもづいた初めての個別株レバETFとなる見込みだ。

そのうちの1本を準備している米運用会社タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル最高経営責任者(CEO)は「米国の投資家が興味を持ちそうな日本企業は多い」とし、米上場のレバETFで「次にはやるのは日本だ」とブルームバーグとのインタビューで述べた。同社の「T-REX 2X Long Kioxia Daily Target ETF」は、早ければ8月初旬に新規設定し、上場の見通しだという。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

世界的な株高を背景にレバETFは人気化し、44兆円規模の市場に拡大した。ただ、ネガティブな話もある。韓国ではサムスン電子などの個別株レバETFが巨大化した結果、株価指数に与える影響が大きくなり、韓国当局は単一銘柄を対象とするレバETFの新規上場を一時停止した。日本で個別株のETFは上場していないが、米国でレバETFが登場すれば国内での株価が影響を受けることもあり得る。

グラニットシェアーズのウィル・リンド最高経営責任者(CEO)は日本の投資家からレバETFへの需要があり、「株価パフォーマンスなどでキオクシアHDはその一つ」と語る。同社はキオクシアHDが来年4-6月に想定するADR上場に合わせ、同ADRを対象とした2倍とマイナス2倍の値動きを目指すETFを上場したい意向だ。日本の個人投資家向けにもオンライン証券などを通じて販売される見通しだと話す。

東京証券取引所の岡崎啓ETF推進部課長は上場制度上、個別株を対象とするレバETFは「分散投資の観点からの要件を満たさないため、日本市場への上場は認められていない」と説明。一方、証券会社などを通じ日本の投資家は海外に上場する同様の商品には投資でき、国内での「商品組成を認めないことが投資家保護や市場の健全な発展に与える影響について、改めて検討する余地がある」と語った。

レバETFと増幅する値動き

キオクシアHD株は国内の主要銘柄の中で最も値動きが大きい。6月に上場来高値を付けてからわずか1カ月弱で株価は半値になった。アナリストの目標株価の平均は現値の約2倍で、市場の評価が不安定な中で株価は乱高下を繰り返している。

オルタス・アドバイザーズの日本株戦略責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は「韓国で見られたように、レバETFは通常の市場構造をゆがめ、株価のボラティリティーを大きく高める。市場、特にAI関連銘柄の狂気を増幅するだけだ」と述べ、実需の投資家にとって投資判断がより難しくなる材料との見方を示した。

30営業日の騰落率を基にした年率換算後のボラティリティー指標は日経平均株価で38%程度と、香港ハンセン指数の22%や米S&P500種株価指数の13%を上回る。韓国総合株価指数は70%を超える。

レバETFは商品設計上、日々保有する資産の売買(リバランス)を行う必要があり、これに関連した取引が株式相場の変動率を高める一因と市場関係者の間ではみられている。

リバランスは通常、ETFの運用会社と契約を結んだ証券会社がETFの参照銘柄の株式や先物、オプションなどを組み合わせて数倍の値動きになる持ち高を構築する。リバランスに伴う日々の売買は、銘柄の値動きとETFの規模から推測できるため、ヘッジファンドやマーケットメーカーなどが先回りして売買を行えば、利益獲得も可能だ。

とはいえ、レバETFは流動性の向上に寄与する面もあり、東証で最も多く取引されているキオクシアHD株はレバETFの影響を吸収できるとの見方もある。また、リバランスの規模はETFの運用資産残高によるため、巨大化しなければ影響は限定される。

米国でのレバETF登場で影響を受けそうな銘柄はキオクシアHDにとどまらない。資料によると、タトル・キャピタルはソフトバンクグループや任天堂、メタプラネットに連動する個別株レバETFの上場準備も進めている。その他の運用会社も東京エレクトロンやフジクラ、レーザーテックを対象とするETFを準備している。

タトル・キャピタルのタトル氏によると、米国だけでなく日本や韓国の投資家からも日本企業のレバETFに対する需要が寄せられている。韓国からの資金流入は同社資産の3分の1に当たると同氏は述べた。

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