「貯め込む老後」から「賢く使う老後」へ
2025年の家計調査は、二人以上世帯全体の貯蓄が過去最高となる一方で、高齢無職世帯では預貯金の取り崩しが表面化したことを示した。もっとも、本稿の分析は世帯の平均値に基づくものであり、それぞれの世帯を一括りに捉えることには限界がある。高齢無職世帯のなかにも厚い貯蓄を持つ層がいる一方で、物価高に対して脆弱な低貯蓄層も存在するため、平均値だけでなく、世帯ごとの貯蓄水準や取り崩し余力にも目を向ける必要がある。
長期のデフレ・低金利環境下では、老後資金については「いかに減らさず維持するか」が重視されてきた。一方、長寿化とインフレが同時進行する現在では、「いかに運用しながら、長期にわたり安心して活用するか」という視点が求められる。物価や寿命、医療・介護支出等の変化を踏まえながら、計画的な資産形成に加え、資産活用・取り崩しの発想が一段と重要になる。2025年の変化は「デキュムレーション」の重要性を考える一つの契機といえよう。
(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 政策調査部 フェロー 谷口 智明)