(ブルームバーグ):今年の米株式相場をけん引してきた半導体株への一本調子の買いが崩れ始めた。AI投資の勢いが今後も続くのかとの懸念が強まり、相場の変動は激しさを増している。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は7月に21%急落し、世界金融危機のさなかだった2008年10月以来の大幅な月間下落率となった。同指数は先月、取引日の約半数で前日比4%以上の上昇または下落を記録。さらに、22営業日すべてで日中の値幅が2%を超え、こうした状況は2020年以来初めてとなった。
ペイブ・ファイナンスのスティーブン・エバンス最高投資責任者(CIO)は「この激しい値動きは、市場全体の不透明感の大きさと、誰も今後の展開を見通せていないことを物語っている」と述べた。
そのうえで、「このサイクルはまだ終わっておらず、投資家は引き続き強気姿勢を維持することはできる」と指摘。「ただ、それにはディズニーワールドの絶叫アトラクションのような激しい動きに耐えられることが条件だ」と述べた。

乱高下の背景には、大手ハイテク企業の設備投資計画に対する市場の見方が一段と厳しくなり、AI投資が今後も持続するのかとの疑問が広がっていることがある。さらに、競争激化に加え、より低コストで効率的に運用でき、必要なインフラも少なくて済むオープンソースAIモデルの普及を受け、投資家の間では半導体株の黄金期はすでに過ぎ去ったのではないかとの見方も出始めている。
SOX指数は月末にかけて2日間で8.3%反発したものの、6月22日に付けた過去最高値からはなお23%安い水準にある。この間、指数を構成する30銘柄はすべて下落し、半数以上は25%超値下がりした。
一部の投資家は、売りが行き過ぎたことで短期的な押し目買いの好機が生まれたとみている。一方、長期的に見れば半導体株の先行きにはなお不透明感が残る。
米資産運用会社バリューワークスのチャールズ・レモニデス最高投資責任者(CIO)は、「これだけ売り込まれれば、半導体株が相応に反発しても不思議ではない。ただ、次の強気相場をけん引する存在になる可能性は低い」と指摘。「半導体株はすでに全盛期を迎え、すでにその恩恵を享受した」と語った。
7月のAI関連株急落の影響は、すでに広がり始めている。OpenAIの元研究者レオポルド・アッシェンブレナー氏が率いるヘッジファンド、シチュエーショナル・アウェアネスは、保有資産の急落で対応を迫られ、数十億ドル相当のハイテク株を売却した。同ファンドはAIブームで追い風を受ける銘柄に投資しており、その中には半導体メーカーのサンディスクも含まれていた。サンディスク株は今年前半に858%急騰した後、7月には時価総額のほぼ半分を失った。
今年に入り株価が2倍、3倍、あるいは4倍になった銘柄に利益確定売りが出るのは自然な流れだ。ただ、投資家心理の急変は、AI成長を軸とする相場の前提が揺らぎ始めたことを示している。
もっとも、今後1年間の業界の成長見通しは依然として明るい。アナリストはエヌビディアやブロードコムの利益が引き続き急拡大すると予想している。先週にはアマゾン・ドット・コムとマイクロソフトが、今後1年間だけでもAI関連に数千億ドルを投じる方針を改めて示した。その資金の多くはデータセンター向け半導体を手がける企業に向かう見通しだ。
懸念されているのは、その先の成長シナリオだ。半導体株、とりわけメモリー半導体メーカーは、需要の増減に応じて好況と不況を繰り返す典型的な景気循環株として知られる。ウォール街では、今回もその例外ではないとの見方が根強い。
バリューワークスのレモニデス氏は「われわれが目にしてきたような利益の急拡大は持続不可能だ」と指摘。「より大きな焦点は利益率を維持できるかどうかだ。利益率は過去の水準から大きくかい離しており、いずれ低下すると考えるのが自然だ。問題は、それがいつ起き、その時に株価がどう反応するかだ」と述べた。
高ボラティリティー
SOX指数の過去60日間の実現ボラティリティーは、新型コロナ禍以来の高水準に急上昇した。過去20年間で同程度の水準に達したのは、世界金融危機時だけだった。

時価総額が急減
7月の急落で、SOX指数構成銘柄の時価総額は2兆2000億ドル減少した。中でも台湾積体電路製造(TSMC)の米国預託証券(ADR)は7月に15%下落し、時価総額は3800億ドル超失われた。同社は7月半ばに設備投資と売上高の見通しを引き上げていた。
TSMCに次いで時価総額の減少が大きかったのはマイクロン・テクノロジーだった。株価は7月に29%下落し、過去10年余りで最大の月間下落率を記録。時価総額は3740億ドル失われた。
インテルも7月に35%下落し、時価総額は約2470億ドル減少。月間下落率は2000年9月以来の大きさとなった。
もっとも、半導体株の値動きにはばらつきもみられた。エヌビディアやブロードコムなど、7月に上昇した主要銘柄もあった。

個人投資家が押し目買い
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、個人投資家は過去に例のない勢いで押し目買いに動いた。直近1週間だけで、半導体関連の上場投資信託(ETF)には過去最高となる120億ドルが純流入した。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、エリック・バルチュナス氏は「半導体ETFへの資金流入や売買高がこれほど膨らんだ例はない。120億ドルという流入額は過去最高であるだけでなく、過去5営業日にETF全体へ流入した資金の25%を占めた。一方で半導体ETFの資産規模は、ETF市場全体のわずか1%にすぎない」と指摘した。
特に、メモリー半導体関連ETFや、半導体株に3倍のレバレッジをかけるETFなどに買いが集まった。

原題:Wall Street’s Favorite Bet Comes Undone as Chips Whipsaw Market(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.