ビットコインのコールドウォレットはオフライン環境で暗号資産(仮想通貨)を保管するため、最も安全な保管先の一つだと見なされてきた。だが、ハッカーがソフトウエアの欠陥を見つけ出し、巨額の資金を盗み続けている。

コールドウォレット「コールドカード」を開発したカナダ企業コインカイトは先週末、ビットコインを保護する暗号化キーにセキュリティー上のぜい弱性があり、一部のウォレットが不正侵入を受けたと利用者に通知した。

暗号資産市場の調査を手がけるギャラクシー・リサーチによると、3日までに約5000のウォレットから、約1億1000万ドル(約173億円)に相当するビットコイン1755枚余りが流出した。

コールドカードはビットコインをコールドウォレットで安全に保管するハードウエアだ。インターネットからは切り離され、最も安全に暗号資産を保管できると考えられている。

だが、デジタル決済会社ブロックのエンジニアリングチームがまとめた報告書によると、ウォレットにアクセスするためにコールドカードが生成する長い単語列「シードフレーズ」が、ソフトウエアの欠陥により予測可能なものとなっていた。

サイバーセキュリティー企業フェイルセーフのアネイリン・フリン最高経営責任者(CEO)は、「オフラインであれば暗号資産は安全との考えが誤りであることを露呈した」と指摘。「このハードウエアはパスワードを生成する役割を担っているに過ぎない。基礎にある数学的アルゴリズムの法則が読み切られれば、パスワードは逆算されてしまう」と説明した。

利用者の一部にとって、このハッキングの報道はにわかに信じ難いものだった。

被害者の1人であるジョナサン・グッドマン氏は、自分には影響がないと思っていたが、念のためウォレットを確認した。

同氏はブルームバーグの取材に対し、「画面が表示された瞬間、出金を示す赤い線が並んでいるのを見て、やられたと思った」と述べ、「7月29日午後9時36分から43分までの間に、自分が持っていた3つのウォレットはすべて空になった」と続けた。

ブロックによると、問題の核心は、コインカイトがシードフレーズを作成する際に乱数生成器を使用した方法にあった。

暗号技術の安全性にとって、規則性が全くない乱数であることが重要な要素となる。しかし、コールドカードウォレットにはフォールバック機能が組み込まれ、デバイスのシリアル番号など常に決まった値を用いて暗号化キーが生成されていた。

その結果、ハッカーは系統的に逆算して暗号化キーをはじき出し、利用者のウォレットから資産を抜き取ることができたという。

7月31日時点で被害額は約3800万ドルと報じられていたが、週末の間に被害額は急速に膨らんだ。

コインカイトはウェブサイトに掲載した声明で、コールドカードのソフトウエアが生成するシードフレーズによって管理されている資産に、危険があることを認めた上で、影響を受けた全ての機種とリリース系統向けに、修正版のファームウエアを提供済みだと明らかにした。

2026年に入ってからこれまでのところ、暗号資産の盗難被害額は前年を下回っている。TRMラボが7月に公表した報告書によると、今年上期の被害総額は9億7200万ドルと、前年同期の23億ドルの半分以下にとどまった。

一方、ハッキング件数は207件と、半年間としては過去最多を記録した。

被害に遭ったグッドマン氏は今回の事件を通じて、自分が利用している技術をどれほど「盲目的に信頼」していたかを痛感したと語った。

今後はビットコインへの投資も、コールドウォレットの利用もしないと宣言し、「これほど複雑で専門的なものなら、やる価値は恐らくないだろう。実際のところ、基本的な仕組みは誰も分かっていない」と話した。

原題:Hackers Hit Bitcoin’s Safest Hiding Place in Ongoing Attack (2)(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.