新世代の最高指導者モジタバ師と、孤立が生んだ「DIY国家」
イランのこの粘り強さを象徴するのが、亡くなったハメネイ師の息子であり、新たな最高指導者に就任したモジタバ師の存在です。
父から息子への世襲や、アヤトラ(高位聖職者)としての伝統的な宗教的資格の不足は、部外者から見れば神権政治のイメージに反するように映ります。
しかしナスル氏は、国家の生き残りをかけたこの戦時下において、モジタバ師こそが最大のカリスマ性と実務能力を兼ね備えた、最も準備の整った指導者であると解説します。

米イスラエルの攻撃によって革命防衛隊の第一世代が排除された結果、今イランでは、シリアやイラクで実戦を積んできた若い新世代の司令官たちが台頭しています。
モジタバ師は過去25年間にわたり彼らの昇進プロセスに深く関わっており、軍部から絶大な支持を得ています。
さらに、父親や妻、息子を戦争で殺害されたという悲劇的な経緯が、イランの宗教的・民族主義的な空気の中で、シーア派の聖人や神話の英雄のような特別なカリスマ性を彼に与えているのです。
イランのこうした強硬な主権意識と軍事力の背景には、歴史的な教訓があります。1980年代のイラクとの戦争の際、各国がサダム・フセインの味方をし、イランは完全に孤立無援でした。
50万人以上が死亡し資源が枯渇する中、彼らは自国の資源だけで戦う方法を学びました。
「イスラム共和国は47年間、自力で模索しながら成長してきました。誰も何も売ってくれず、制裁が強まった結果、イランは孤立した『DIY(自作)国家』になったのです。ミサイルやドローンを国内生産できる事実がそれを物語っています」

イランはこの「グローバルなゲリラ戦略」を用い、レバノンやイラク、シリアに民兵組織を構築し、国連での拒否権を求めてロシアを支援するなど、独自の生存戦略を展開してきました。
彼らにとってこれは無謀な宗教戦争ではなく、47年間にわたるアメリカの経済制裁と包囲網を打ち破るための、文字通りの「最終決戦」なのです。