「イランは武器を置いて降伏するなど、決して考えていません。これはイランにとっての最終決戦なのです」
そう毅然と語るのは、高名な政治学者でありイラン研究の第一人者、バリ・ナスル教授です。オバマ政権の顧問も務め、複雑極まる中東情勢と米イラン関係の分析に生涯を捧げてきたナスル氏。
ブルームバーグの番組にゲスト出演した同氏の言葉は、アメリカやイスラエルの攻撃、そして度重なる制裁に晒されながらも、なぜイランがミサイルやドローンを発射し続けられるのかという、世界が抱く疑問の核心を突くものでした。

1979年のイスラム革命によって誕生したイスラム共和国。その歴史はナスル氏自身の人生をも変えました。当時18歳だった同氏と家族は身の安全を恐れて亡命を余儀なくされ、以来アメリカでの生活を続けています。
祖国を失うトラウマを抱えながらも、客観的かつ痛切な視点で故国の動向を見つめてきた同氏の解説から、緊迫するイラン情勢の真実に迫ります。
トランプ大統領の誤算と、イランが仕掛ける「持久戦」
米イラン間の緊張が高まる中、トランプ大統領は「戦争はまもなく終わる」というシグナルを発しています。
しかしナスル氏は、それが大統領の個人的な「希望」に過ぎないと一蹴します。
「当初からトランプ氏は短期決戦を望んでいました。大勝して最高指導者を殺害し、イスラエルと共にイランの戦略拠点を爆撃して、新しい指導部を誕生させる。
それによってイランを発展の軌跡へと導いた大統領になりたかったのです。しかし今や、この戦争は彼の制御を超えてはるかに長引き、混乱し、アメリカにも地域の基地や軍隊の被害、エネルギー市場への悪影響という形で代償を強いています」
終わらせたいアメリカに対し、イランは「まだやめる気はない」と食らいついています。
多数の死者を出し、燃料庫が炎上するなど多大な代償を払っていますが、それらはすべてイラン側の計算内だったとナスル氏は指摘します。
強大な空軍力を持つ米イスラエル両軍を相手にすれば、苦戦することは最初から分かっていたのです。

ここで重要になるのが、イラン側の勝利へのアプローチです。
これは「どちらが大きな爆弾を持つか」という火力の勝負ではなく、「どちらがより痛みに耐えられるか」という忍耐力の勝負、すなわち持久戦なのです。イランは、アメリカやイスラエルを「速く走ることはできても、長距離ランナーではない」と見ています。
だからこそ、打ちのめされても立ち上がり、相手が戦争意欲を失うほどの高い代償を払わせるまで耐え抜く覚悟を固めているのです。