人間とハチとでは、社会の成り立ちや仕組みが異なっている。

ハチの仲間は巣を作って生活しているが、そのあり方は人間などの哺乳類とは大きく異なる。ハチの社会は、女王バチ(メス)と働きバチ(メス)、オスという3つの役割から成り立っている。

こうした役割の違いは、遺伝情報を担うDNAを含む染色体の構成に大きく影響を受けている。人間は両親からそれぞれ23本ずつ、合計46本の染色体を受け継ぐ「二倍体」である。

一方、ミツバチでは、メスは両親からそれぞれ16本ずつ受け取り、合計32本の染色体をもつが、オスは母親由来の16本のみをもつ。

つまり、メスは二倍体、オスはその半分の染色体をもつ「半数体」である。

このように雌雄で染色体数が異なる仕組みは「半倍数性」と呼ばれる。スズメバチなどでも本数は異なるが、同様にメスがオスの2倍の染色体をもつ。

半倍数性に加え、生態・行動・環境要因が組み合わさることで、巣を中心とした社会的な生活様式が進化してきた。

たとえば、働きバチが自らは繁殖せず女王バチを助ける「真社会性」はその代表例である。

もっとも、半倍数性には利点だけでなく欠点もある。

遺伝的多様性が低くなりやすく、環境変化や病原体の流行に対して脆弱になる場合がある。

本稿では、このような半倍数性のメリットとデメリットについて見ていく。

ハチの半倍数性とは

ハチやアリ、キクイムシに見られる性決定の様式である。

人間などと異なり、女性はX、男性はYといった性染色体によって性が決まるのではなく、染色体数によって性が決定される。

ハチでは、受精していない卵から生まれる半数体(一倍体)の個体がオスとなり、受精卵から生まれる二倍体の個体がメスとなる。

メスの中で女王バチと働きバチに分かれるのは、幼虫期の栄養条件による。女王バチは、アミノ酸やビタミンB群、ミネラルなどを豊富に含む「ローヤルゼリー」を与えられ続ける。

一方、働きバチは孵化後3日程度までは栄養価の低いワーカーゼリーを食べ、その後は蜜や花粉を摂取する(ミツバチの場合)。

この違いにより、女王バチは平均3年程度生きるのに対し、働きバチの寿命は平均1か月、越冬しても半年程度にとどまる。

なお、オスのハチは交尾に成功するとその場で死に、成功しない場合も巣から追い出され、やがて死ぬことが知られている。