パワーカップル・ファミリーは当面、増加傾向、女性の正規雇用者率に伸長の余地あり
本稿では、統計の最新値を用いて、世帯の所得分布やパワーカップル世帯数の動向について分析した。その結果、夫婦ともに年収700万円以上のパワーカップルを含む、所得1,200万円以上の世帯は総世帯の7.5%を占め、南関東など都市部に多く居住している傾向が見られた。
また、共働き夫婦の年収の関係を分析したところ、夫婦の年収はおおむね比例関係にあり、妻の年収が700万円以上の場合、約7割の世帯で夫の年収も700万円以上であった。
一方、相対的に妻の年収が低いほど夫の年収も低くなる傾向があり、過去から指摘されてきた世帯間の経済格差の存在があらためて確認された。
また、近年、パワーカップル世帯数は増加傾向にあり、2025年では49万世帯に達し、過去10年で2倍に増加していた。
総世帯に占める割合は約1%、共働き世帯では約3%と限られた層ではあるものの、夫婦それぞれの年収ではなく、世帯年収に広げて見ると100万世帯を超えており、消費市場として一定の魅力を持つ層である。
さらに、夫の年収階級別に妻の労働力率を分析したところ、年収1,500万円以上の高収入の夫であっても妻の6割超が就業しており、その割合は過去10年で1割以上上昇していた。
若い世代ほど、出産・子育て期における就業継続の環境が整いつつあり、男性の育児休業取得も進んでいることから、夫婦ともに子育てをしながら働くという価値観が強まっている。
その結果、夫が高収入であれば専業主婦という、これまでの価値観は弱まっているだろう。
また、近年ではパワーカップルの中でも子のいるパワーファミリーが増加しており、2025年には約3分の2に達していた。
具体的な消費の話題については別のレポートで述べる予定だが、すでに不動産や教育、旅行、家具、家電製品といった比較的高額な商品がラインナップされている市場では、パワーカップル・ファミリーは消費のけん引役として注目されており、今後も堅調な消費が期待される。
では、今後、パワーカップルは増えるのだろうか。そして、増えるべきなのだろうか。
短期・中期的にはパワーカップル・ファミリーは増加すると考えられる。
特に、子のいるパワーファミリーの増加が見込まれる。その理由として、若い世代ほど出産・子育て期を含め、キャリア形成に励むことのできる環境が整い、機会も拡大している点が挙げられる。
実際、年収700万円以上の夫を持つ妻の労働力率は過去10年で18.6%から25.6%に上昇し、該当世帯数は約2倍に増えた。出産・子育て期にも就業を継続する妻が増えることは、新たにパワーファミリーを生み出す直接の条件となっている。
こうした環境整備に加え、40代以下の世代では、女性の大学進学率が短大進学率を上回り、上の世代と比べて女性も男性と同様に進学先や就職先を選択する機会が増えた世代だ。
よって、若い世代ほど女性自身のキャリア形成意識も強まっていると考えられる。
加えて、夫婦ともに育児に積極的に関わろうと考える層が増え、夫も妻のキャリア継続や成長を支援しようとする意識が強まっていると考えられる。
長期的には少子化の影響も無視できないが、現状では大学進学率と比べて正規雇用者率における男女差が大きいことを踏まえると、大半が正規雇用者夫婦と見られるパワーカップル・ファミリーの裾野を広げる余地は十分にある。
例えば、大学・短大進学率の男女差は2025年で1.4%pt(男性61.6%、女性60.2%)まで縮小している一方、正規雇用者の割合の差は25~29歳で10.0%pt(男性84.1%、女性74.1%)、30~34歳で19.8%pt(男性88.4%、女性68.6%)と、年代が上がるほど差が拡大する。]
つまり、進学の段階ではほぼ並んだ男女が、就業段階で差が開くという構造がある。この状況は女性の管理職比率の向上や男女の賃金格差是正を考える上で大きな課題だ。
なお、足元で、大企業を中心に初任給が大胆に引き上げられ、若手社員の賃上げが進んでいる。
一方で、物価上昇が続く中で名目の年収700万円が持つ実質的な意味合いも変化しており、近い将来、夫婦ともに年収700万円以上との本稿における定義を見直す(上げていく)必要もあるだろう。
その際には、他の研究機関で用いられている世帯年収を基準とした概念との関係整理も論点となる。

パワーカップルが増えるべきかどうかについては、まず、パワーカップル・ファミリーが増えやすい環境を整えられることが重要だと考えられる。
近年の若者のライフコースの希望を見ると、共働きを望む割合が増えており、現在では3割を超えて最も多い選択肢となっている。
また、女性の生涯賃金を推計すると、正規と非正規では2倍程度の差がある。
共働きをしやすい環境がさらに整い、将来を担う世代の経済基盤が安定することは、個人消費の拡大や日本経済の活性化にも直結する。
また、高齢化が一層進み、単身世帯が増加する中では、仕事と生活の両立環境の改善や経済基盤の安定化が図られることは、社会の安定化にも寄与すると考えられる。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子)