(ブルームバーグ):米アマゾン・ドット・コムの現状を見極める上で難しいのは、同社の事業領域があまりにも広大なことだ。オンライン小売り最大手であり、クラウドコンピューティング最大手でもある。
さらに、データの取り方によっては、デジタル広告と食品スーパー、動画配信、データセンター向け半導体設計でも上位5社に入る。
最高経営責任者(CEO)のアンディ・ジャシー氏の手腕を評価する際も、同じ難しさがある。ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌の編集者ブラッド・ストーン氏と筆者は、同誌向けに同氏の経営を特集する過程でそれを実感した。
私たちはまず、同社にとって重要なステークホルダーごとに分けて検証した。
顧客はどうか。支出の流れを見る限り、満足しているようだ。取締役会やジャシー氏に近い幹部陣も同様だ。
一方、150万人の従業員全体では疑問を抱く人もいる。人員削減や厳格なコスト管理によって、ジェフ・ベゾス創業者時代の理念だった「懸命に働き、楽しみ、歴史をつくる」のうち、真ん中の楽しむ部分が損なわれているためだ。
投資家はどうか。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期、ジャシー氏が支出拡大に急ブレーキをかけたことで株主は大きく揺さぶられた。
ただ最近は、人工知能(AI)関連の大型契約や、2021年7月の就任時よりも構造的に収益性が高い企業へと変貌しつつあるとの見方を背景に、安心感が広がっている。
その投資家層に向けアピールする場となったのが、今週の年次株主総会だった。総会はパンデミック以降と同様、オンライン形式で開催された。多くの大企業と同じく、アマゾンはこの形式的な株主民主主義の場を波乱なく終えようとする。
20日の総会もそうだった。取締役は再任され、社外株主提案は提案者による説明の後に否決され、経営陣報酬に関する象徴的な投票も承認された。
アマゾンでは最近、接戦の株主投票もあった。従業員や公的年金基金、活動家投資家らが、労働者の権利や環境・ガバナンス問題への対応強化を求めてきたためだ。また、ジャシー氏と幹部2人に対し、総額3億5000万ドル(約557億円)相当の複数年報酬パッケージが付与されたことを受け、報酬面でも批判を浴びた。
ジャシー氏はCEO就任初日から、巨大で、時に大きな論争を呼ぶ企業を運営する現実に対応するため、機敏な対応を迫られてきた。
20日には、AIや半導体、配当、小売りイノベーション、倉庫作業の人間工学プログラムに対する従業員の批判、衛星事業、さらにライアン・ゴズリング主演の「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が異例の大ヒットとなったアマゾンMGMスタジオ事業に関する質問に応じた。ここにもまた、事業の広がりが表れている。
先月のインタビューで、私たちはジャシー氏に対し、米国の資本主義では長年にわたり企業の専門特化が主流となってきたにもかかわらず、なぜアマゾンは複合企業として事業を拡大し続けられるのかを尋ねた。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の分割がその代表例だ。昨年前半には、小売り専業に近いウォルマートの利益が、ウォール街でアマゾンより高く評価される場面もあった。
ジャシー氏は、アマゾンの各事業は互いを補完し合っていると説明した。最も分かりやすいのは小売り分野だ。「プライム・ビデオ」を熱心に利用し、自宅に「アマゾンエコー」端末を複数置いている顧客は、アマゾン・ドット・コムでもより忠実なユーザーである可能性が高い。
また、企業顧客の間では、アマゾンの幅広い事業領域をまたぐ契約を求める動きが強まっているという。社内では日々出社して顧客の生活をより良くしようとする姿勢が共通理念になっていると語った。
「私たちは間違いなく、非常に多くの異なる顧客体験を追求している」とジャシー氏は述べ、「同時に、グループとして協力することで得られるメリットも数多くある」と強調した。
(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)
原題:Amazon’s Sprawl on Display at Shareholder Meeting: Tech In Depth(抜粋)
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