過去2年、夏場の雇用統計の悪化(アノマリー?)が金利上昇に歯止め
注目された米中首脳会談は、特に中東情勢に関して成果はほとんどなく、目立った成果は得られなかった。むろん、中国はトランプ大統領が中間選挙を前に現状を打破したいというインセンティブがあるため、強気な態度で会談に臨んだという面はある。しかし、トランプ大統領もまだそれほど追い詰められていないという状況が、今回の会談の成果を生みにくかった要因だろう。筆者は、株価が堅調であり続けることが、イラン情勢の改善を遅らせている面があると整理している。トランプ大統領の支持率は徐々に下がっているとはいえ、株価は好調であり、批判が生じにくい。トランプ大統領が前言を撤回してTACO的な動きに繋がらないことが、停滞状態を引き起こしているようにみえる。
本来であれば、景気の不透明感とともに株価が低迷し、指導者にはアラートが発せられた可能性もあるが、なかなかそういった状況になっていない。その結果、本来は先行き不透明感が強い局面では安全資産として振る舞うことが期待される債券市場にもストレスがかかり、インフレ懸念を通じて債券市場がアラートを発し始めたというのが足元の市場の動きと言える。
24年も25年も、債券市場が金利上昇を通じてアラートを発した。そして、いずれの年も夏場にかけて雇用統計が悪化し、「やはり景気悪化を懸念すべきだ」という見方が台頭し、市場では自然と悲観論が台頭した。
実際のデータをみると、アノマリーのようなものが確認できる。失業率を年前半と後半に分けて平均値を求めると、24年前半が3.9%、24年後半が4.15%(前半期比+0.25%pt)、25年前半が4.17%(同+0.02%pt)、25年後半が4.38%(同+0.21%pt)、26年1~4月が4.33%(同▲0.06%pt)という数字の並びである(四捨五入の関係で変化の数字は一致しないものがある)。ここまでは明らかに年前半が強く、年後半が弱いというリズムになっている。少なくとも筆者は(不本意ながらも)経済分析の観点からこのアノマリーの背景を説明することはできていないが、今年もこのアノマリー通りとなれば、年後半に景気悲観論が台頭する可能性がある。金融市場では景気悪化懸念によって利下げ観測が台頭し、長期金利にも低下圧力がかかるだろう。供給サイドの問題が多少改善されていれば、需要の弱さが懸念され、原油価格にも下落圧力がかかる可能性もある。景気悪化懸念は株価の下落要因となるが、利下げ観測がクッションとなり、小幅な下落にとどまるだろう。
逆に、26年はこのアノマリーが発生しないということになれば、債券市場がトランプ大統領にアラートを発し続ける可能性が高い。徐々に金利上昇圧力が強まり、株式市場と債券市場がともに不安定な動きが続くことになりそうである。理由が特定できないアノマリーに注目するというのは、エコノミストとしては不本意なところだが、夏場以降の雇用統計には注目が必要だろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)