(ブルームバーグ):半導体メーカー株がS&P500種株価指数の値動きを左右する度合いを強めている。株価を過去最高値圏に押し上げる一方、上昇の持続性を巡る懸念も招いている。
15日の売りで、こうした懸念が表面化した。S&P500種は1.2%下落し、3月以来最大の下げとなった。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も4%安。ただ、今年の大半を通じて両指数はそろって上昇しており、S&P500種の年初来上昇率8%の半分余りは一握りの半導体株の上げによるものだった。上昇を主導したのは、強気相場の中心的存在であるエヌビディアのほか、年初来で約500%上昇したサンディスク、株価が2倍余りとなったマイクロン・テクノロジーなどだ。
人工知能(AI)業界を支える半導体需要を背景に、こうした買いが中東での戦争や原油高にもかかわらず、S&P500種を押し上げてきた。同時に、半導体株は現在、S&P500種の18%を占め、過去20年余りで最も比重が高くなっている。こうした偏りは、勢いが変わったり半導体需要が冷え込んだりした場合、市場全体の売りを増幅させる可能性がある。好不況サイクルで知られる同セクターでは、こうしたリスクが常に意識される。
トゥルイスト・アドバイザリー・サービスのキース・ラーナー最高投資責任者(CIO)は「リターンがこれほど集中すると、こうした急激な動きに対して相場は一段と脆弱(ぜいじゃく)になる」と指摘。「ファンダメンタルズが支えているとしても、相場が永遠に一直線に動くわけではない」と述べた。

現時点では、相場を押し上げている支出が近く鈍化する兆しは乏しい。大手テクノロジー企業は、コンピューティング能力の拡大競争にしのぎを削っている。設備投資額が最大規模となるアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズの4社は、7000億ドル(約111兆円)近くを今年投じる見通しだ。一部の推計によると、今後5年間の設備投資額は5兆ドルに迫る。
一方、テクノロジー企業の利益は急増している。S&P500種を構成する半導体関連企業の第1四半期利益は、前年同期比84%増となる勢い。個別企業では予想が驚異的な水準に達しており、アナリストは、米最大の半導体メモリーメーカーであるマイクロンの利益が26年に670%増え、658億ドルに達すると見込む。
ニューバーガー・バーマン・グループのマルチアセット部門共同CIO、ジェフリー・ブラゼク氏は「利益の伸びが加速し続ける限り、それほど懸念していない」と指摘。「株価上昇は利益の増加を伴っており、それが弱まっている兆しはない」と述べた。
多くの投資家は、AIサービスが経済全体に広がれば好不況サイクルが断ち切られるともみている。コンピューティング需要が着実に増え、半導体販売が安定的な基盤を得るためだ。
グレナディラ・アドバイザリーの創業者で最高経営責任者(CEO)のアンナ・ラスバン氏は「AIに必要な処理能力は過小評価されてきた。まだ十分な水準には達しておらず、需要は途方もなく大きい」と指摘。「特にインフラ分野では、売上高成長の持続性を見込みやすい」と述べた。
それでも半導体企業は、アルファベットやアップルのような巨大テクノロジー企業に比べ、景気循環の振れをはるかに受けやすい。これらの大手は幅広い事業を展開し、複数の業界で支配的な地位にある。一方、半導体メーカーの好況期は通常、需要鈍化や価格決定力の低下、利益の落ち込みを伴う不況期へとつながってきた。
こうした局面を投資家が見極めるのは難しく、容赦ない売りを伴う場合も多い。22年にテクノロジー株が弱気相場入りした際、SOXは50%近く下落し、エヌビディアは約70%下げた。一方、ナスダック100指数の下落率が一時36%に達したのに対し、一部の大型テクノロジー株の下げはより小さかった。

今のところ、そうした調整局面を見込む投資家はほとんどいない。それでもここ数週間、警戒を促す声は増えている。映画「マネー・ショート」で知られる投資家のマイケル・バーリ氏は先週、テクノロジー株へのエクスポージャーを減らすよう助言し、市場を「血まみれの自動車事故が起きる数分前」の状況になぞらえた。
同様に、BTIGでテクニカル分析を率いるジョナサン・クリンスキー氏は、半導体株指数が「放物線的」な上昇を遂げた後、現在の水準から20%余り下落するとの見方を示した。
強気派でさえ、同セクターの循環性が極めて強い点はよく認識している。ただ、ニューバーガーのブラゼク氏のように、多くは上昇相場にはなお余地があるとみている。
同氏は「ハイパースケーラーは設備投資を一貫して引き上げてきたが、いずれ安定するか反転する」と述べた。「その局面で、半導体分野ではかなり大きな調整が起きる可能性がある」と語った。
原題:Volatile Chipmaker Stocks Emerge as Key Driver of S&P 500 Rally(抜粋)
--取材協力:Ryan Vlastelica.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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