インフレ下で変わる国産米の価格形成
ここまで輸入米側の変化を確認したが、次に国産米側の価格形成の変化を見る。
日本経済は、長らく続いたデフレ環境からインフレ環境へと移行しつつある転換期にある。エネルギー価格の上昇、円安の進行、国際的な資源価格の高騰などを背景に、国内の物価水準が上昇している。
農業分野も例外ではなく、肥料、燃料、農業資材、人件費などのコストが上昇している。なかでも肥料や燃料は輸入に依存度が高く、為替・国際価格の影響を受けやすく、昨今の中東情勢の不安定化(例:イラン情勢)を踏まえると短期間で大きく変動する可能性が高い。
今後も物価上昇が継続するのであれば、国産米の小売価格が、仮に需給が一時的に落ち着いたとしても、過去の水準(精米5kg当たり税込2,000円台前半)まで大きく下がることは考えにくい。
現在のコスト水準を前提とすれば、精米5kg当たり税込3,000円~3,500円程度が、令和8年産以降の国産米の一つの現実的な価格帯として想定される。
食料システム法に基づき策定されている米のコスト指標(令和8年4月時点)では、生産から小売までの総コストは精米5kg当たり2,816円と算定されている。
もっとも、この指標は費用の合計であり、各段階の事業者の利益や、需給変動・在庫負担などの不確実性に対応するためのマージンは含まれていない。
そのため、持続的な供給を前提とした場合、実際の小売価格はコスト指標を一定程度上回る水準で形成されることになる。
この結果、需給が緩和した場合でも、価格が3,000円を大きく下回る水準に定着する可能性は低い。
主要ECサイト(Amazon、楽天、Yahoo!ショッピング)における輸入米の販売価格を確認すると、送料込み精米5kg当たり税込3,000円~4,000円程度で販売されている。
一部の小売・通販でも同価格帯の輸入米の販売事例が見られるが、販路や時点により異なるため一般化には留保が必要。
今後、国内の生産コストがさらに上昇すれば、そのコストは価格に転嫁されると考えられる。一方、輸入米の調達コストが大きく変動しない場合は、国産米の小売価格が輸入米を上回る状態が常態化する可能性がある。
この状況は、輸入米が令和の米騒動における補完的な存在にとどまらず、国産米と並んで価格や調達を検討する際の選択肢として並ぶ可能性があることを示している。