・AIの普及により海外では若年大卒者の雇用環境悪化がみられる一方、日本では新卒採用の売り手市場が続いている。背景には、日本の新卒採用が単なる「エントリーレベル職の補充」ではなく、将来の専門人材・幹部候補を育成するポテンシャル採用として機能していることがある。
・ジョブ型雇用が中心の欧米では、AI が入口となる職務を代替すると若年雇用に影響が及びやすい。これに対し、メンバーシップ型雇用の色彩が残る日本では、AI による定型業務の省力化が直ちに新卒採用の縮小へつながるとは限らない。
・日本で AI による雇用調整の影響を受けやすいのは、新卒者よりも社内で余剰感のある中高年層や、事務職の担い手となっている女性・非正規雇用層とみられる。「エントリーレベルの仕事=新卒の若者」という欧米型の構図が日本では成り立ちにくいことが、AI の雇用影響の表れ方を異なるものにすると予測する。
AI→若者失業が見えてこない日本
新卒採用における「売り手市場」状態が続いている。文部科学省と厚生労働省の調査によれば、2026年3月卒業の大卒者の就職率(2026年4月1日時点)は98.0%と前年度から横ばいで高止まりが続いた。人手不足環境下で、若年雇用に対する引き合いは依然として強い。少子化により大卒者数自体が頭打ちとなるなか、若手人材の不足感は続いており、企業側の採用意欲は衰える気配が乏しい。内定の早期化・複数化も常態化しているようだ。

一方で、昨今しばしば話題になるのがAIの労働市場への影響だ。AIへの曝露度が高いホワイトカラー職、中でもエントリーレベルの仕事はAIによる代替が進みやすいとされ、実際に海外ではその影響が顕在化する動きがみられる。米ニューヨーク連銀の集計では、22~27歳の大卒者の失業率は2026年3月時点で5.6%と、全労働者(16~65歳)の4.2%を1.4ポイント上回った。従来、大卒新卒者の失業率は全体平均を下回るのが常だったが、2023年以降にこれは逆転しており、差は開く傾向にある。特に、顕著な影響がみられているのはエンジニア、コンピュータサイエンスやファイナンスなどだ。AIが業務の生産性を爆発的に引き上げたことで、実務部隊としての新人を多数抱える必要性が薄れたということなのだろう。スウェーデンの実証研究では、生成AIへの曝露度が高い職業では22~25歳の労働者の採用が2025年初頭までに5.5%減少した一方、50歳以上の雇用はむしろ1.3%増えたことが示されている(Lodefalk et al., 2026)。AIが若年層の「入口」を狭めている、という構図は欧米で確かに進行中である。
日本にも同じ波が訪れるのは時間の問題…なのかもしれない。だが、その時間は思いのほか長いのではないか、と考え始めている。
