(ブルームバーグ):2008年当時、フォーチュン500企業を率いる女性は12人だった。全体の2.4%に過ぎなかったとはいえ、それでも前進だった。その10年前の割合は0.4%、つまりマテルのジル・バラッド氏とゴールデン・ウエスト・ファイナンシャルのマリオン・サンドラー氏の2人だけだった。
筆者はこの数字をよく覚えている。フォーチュン誌に入社したばかりだった筆者にとって、最初の仕事の1つがビジネス界で最も影響力のある女性ランキングの作成に携わることだったからだ。最高経営責任者(CEO)をはじめとする「Cスイート」と呼ばれる経営層にたどり着いたわずかな女性たちの動向を追っていた。
それ以来、筆者は米企業での女性地位向上を測る有力な指標として、女性CEOの人数を数えてきた。もちろん、完璧な尺度ではないが。
今年の数字が公表された。そして、その内容は憂慮すべきものだった。フォーチュン500企業を率いる女性は55人で、全体の11%を占める。客観的に見れば改善だ。
しかし、このペースで増加が続いたとしても、男女同数になるには約100年かかる計算になる。さらに懸念されるのは、過去最多だった昨年から全く増えていないことだ。
実力主義なのか
米企業が誰もが望むと主張する実力主義の世界であるならば、労働力人口の約半分を占め、大卒者の過半数を占める女性が、企業の最も重要な役職でこれほど少数にとどまるはずがない。
今回の数字だけを見れば、伸び悩みは単なる一時的な現象であり、ビジネス界における女性の地位向上が停滞している兆候ではないと主張することもできる。しかし、現実はそうではないようだ。他の指標を見れば、多くの場合、停滞どころか後退していることが分かる。
- 2年連続で男女賃金格差が拡大した
- 連続拡大は1960年代以降で初めて
- 昨年、S&P500種構成企業の新任取締役の過半数を白人男性が占めた
- これは2017年以来
- 女性が獲得した新たな取締役ポストは全体の約3分の1で、22年の44%から低下。非白人取締役の落ち込みはさらに大きく、4年間で24ポイント低下し20%
- 黒人女性の就業率はここ25年間でも目立つ落ち込みとなった
- 少なくともここ10年、女性は企業階層のあらゆるレベルで少数派の状態が続いている
- 特に上級職でその傾向が強く、経営層に占める女性の割合はわずか29%
- コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーと女性支援団体リーンイン・ドット・オーグが実施する女性ホワイトカラー労働者の実態調査で、男女の野心格差は調査開始以降の11年間で最大となった。昇進を望むと答えた割合は、女性と男性で6ポイントの差があった
率直に言おう。これらの数字が示す状況は厳しい。そして、この後退を引き起こした原因は1つではない。したがって、何か1つを元に戻せば、全てが改善するという話でもない。
それは文化や政治、政策の変化が複雑に絡み合った結果だ。トランプ米政権や、ウォーク(社会問題に関心が高い層)に反対する活動家による多様性・公平性・包摂性(DEI)施策の後退であり、柔軟な働き方の縮小だ。
研究によれば、こうした柔軟な勤務制度は、場合によっては多くのDEI施策以上に企業社会の多様化を促進していた。週5日の出社や長時間労働の要求、有給休暇の削減、さらには職場でより「男性的なエネルギー」を求める風潮も、女性の活躍を阻む要因だ。
男女同数の実現遠い
もちろん、08年もビジネス界で女性の地位向上が大きく進んだわけではない。しかし、当時は少なくとも、女性のリーダー不足が問題だとCEOらは公然と認めていた。たとえ何も行動するつもりがなかったとしてもだ。
今では、一連の後退はそれほど重要な問題ではないという認識が経営トップに広がっている。
企業の5社に1社が、女性のキャリア向上をほとんど、あるいは全く重視していないと認めていることが、その点を明確に示している。有色人種の女性については、その割合は約30%に跳ね上がる。
企業が重視する指標にも、こうした姿勢が表れている。管理職に占める女性の比率に関するデータを開示するS&P500種構成企業の割合は昨年、16%低下。従業員全体に占める女性の比率を公表する企業も14%減った。
筆者が女性CEOの数を追い始めた約20年前、関心は常に、相当数の女性が経営トップの座に就くまでに何年かかるかということだった。だが、現在のより差し迫った問題は、米企業がそもそも女性を経営トップの座に就かせることを重要だと考えているかどうかかもしれない。
こうした状況を踏まえると、男女同数の実現に100年かかるという見通しですら楽観的過ぎるかもしれない。
(ベス・コウィット氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米企業を担当しています。以前はフォーチュン誌のシニアライター兼エディターでした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)
原題:Corporate America Is No Meritocracy. Just Ask Women: Beth Kowitt(抜粋)
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