(ブルームバーグ):シンガポールのウォン首相は、過去最低の出生率に対応する手段として、出産を促進するためのインセンティブ(優遇措置)への依存を減らし、家庭の生活向上支援に注力する方針を表明した。
ウォン首相は8日のシンガポール記者クラブ主催の対談で、各国が直面する課題である出生率低下を食い止めるための政府の取り組みには限界があることを認めた上で、「出産を促すためのインセンティブと考えるのではなく、シンガポールの家庭の生活を本当に良くするために何ができるかという観点で考えるべきだ」と語った。
政府はこれまで、出産ボーナス現金支給や父親の育児休暇の拡大、卵子凍結の規制緩和といったインセンティブを提供することで、出生率低下傾向の反転を目指してきた。しかし、女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は、2025年に過去最低の0.87に低下した。
家族計画に関する調査では、経済的負担や育児ストレス、仕事と家庭の両立の難しさが主な要因として挙げられている。
政府は2月、この「存続に関わる課題(existential challenge)」に取り組むため閣僚級タスクフォースを設置すると発表。結婚・子育て支援策に約70億シンガポールドル(約8720億円)を投入すると明らかにした。シンガポールは今年、人口の5分の1が65歳以上となる「超高齢社会」に突入する見通しで、人口の持続可能性に対する懸念が一段と高まっている。
同様の問題は世界各国でも深刻化している。日本の出生率は過去最低を更新し、フランスや中国、マレーシアでも低下が続く。一方、韓国では家族支援策の効果もあり、25年に出生率が2年連続で上昇。長年にわたり世界最低水準の出生率に悩んできた韓国の事例は、出生率のトレンドが改善し得るという希望を示している。
出生率が急激に回復する見込みは薄いため、ウォン氏は移民受け入れに前向きな姿勢を維持しつつ、流入を慎重に管理していくと述べた。さらに、生産性と経済成長を維持するため、技術や人工知能(AI)への依存を一段と高める必要があると付け加えた。
原題:Singapore Pivots From Baby Incentives as Fertility Rate Hits Low(抜粋)
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