■ 高齢者の社会参加支援策に関する現状の課題

なぜ、このような関係性を示したかと言えば、現状の社会参加支援策にいくつか課題があると考えているためだ。

まず、就労に関しては、福祉的就労を含めて、とにかく高齢者が活躍できる選択肢があまりにも少なすぎるということ。

人生100年時代の言葉が喧伝されるなか、長生きリスクに備えてこれまで以上に就労を望む高齢者は増えていくだろうが、選択肢が広がらなければ話が進まない。

また地域活動に関しては、自治体や関係団体が中心となって様々な取組みは見られるものの、あくまで高齢者に対して一律的に供給者側の情報を提供しているだけに止まっている。

大きな網を投げて、関心を持たれる人が少しでも見つかればよいということかもしれないが、誰に向かって情報発信しているのか、相手(高齢者)のことを今一度しっかり見た上で提示する選択肢を考え準備することが必要である。

さらに、社会の側からのアプローチはどうしても縦割りの要素が大きく、就労と地域活動とは担当する組織や人が異なる。個人の立場から考えれば、何をしたいのかの検討において就労と地域活動の垣根はない。

したがって、就労と地域活動のいわゆる社会参加の選択肢を一元的に取り扱って、高齢者と対峙することが望まれる。こうしたことが、高齢者の社会参加が進まない一つの要因になっていると考えられる。

■ 高齢者の社会参加支援策として必要なこと(期待すること)

では、どうすればよいか。様々なアプローチが考えられるが、特に必要だと考えていることは次の2点である。これらの組織(仕組み)を地域社会(自治体)に実装していくことが必要と考えている。

一つは、地域(自治体)に「中間支援組織」、つまり地域資源(活躍の場)と生活者(高齢者)の間に立って、多様なニーズと選択肢を一元的につなげるマッチング組織(仕組み)を構築することである。

現在、厚生労働省が主導する「生涯現役地域づくり環境整備事業」でこうした組織づくりが進められているが、まだ一部の地域のみであり、これを全国的に広げていくことが望まれる。

選択肢を広げるにしてもマッチングをするにしてもそれを担う「活動のエンジン」がなければ高齢者の社会参加は進まない。

二つは、高齢者向けの「地域の学校」である。

これはより良いマッチングをはかるための一つの有効な“工夫”として提案したい。前述のマッチング組織が担うことが一つの理想でもある。

高齢期に仕事にせよ地域活動にせよ新たな一歩を踏み出す時、いきなりというのは二の足を踏みやすい。

まず、「地域を知る」「自分を知る(何ができるそうか)」という「学び」から入って、地域や人との「つながり」を創り、そして、自分にあった場に進んで「活躍」できる、という一連の流れを提供することがより効果的でスムーズなマッチングにつながると考えている。

これはカルチャースクールなど、関心のある人だけが集まる場ではなく、小学校・中学校のように当たり前のように地域にある「学校」をイメージしている。

以上、これからますます高齢者の活躍(社会参加)が期待されるなか、その活躍を導くために社会としてどうすればよいか私見を述べてみた。

本稿は総論に止まるが、今後も上記の2つの実装化のことも含めて、続編(生涯現役社会シリーズ)の中で詳述していく予定である。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘 )

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