政策の世界では、善意に基づくが複雑なアイデアが、キャッチーな名称によって台無しになることがよくある。

英国には「寝室税」があり、米国では「死亡税」を巡る争いが定期的に起きてきた。今度は日本の番だ。来月導入される「独身税」がそうだ。これは出生率の引き上げを図る財源の一部だ。

この名称には大きく2つの問題がある。そもそもこの呼び名は、正式名称である「子ども・子育て支援金」の代わりにソーシャルメディア上で生まれたものだ。

第1に、これは税ではなく、すべての労働者が支払う公的医療保険料への追加負担である。第2に、独身者だけに課されるものでもない。子どもの有無にかかわらず、全加入者が月平均250円を負担し、将来的には引き上げられる予定だ。

この制度は岸田文雄政権が導入を決めたもので、保育サービスの拡充や第2子以降の手当増額など、北欧諸国並みの子育て支援策の財源とする狙いがある。しかし、独身税という呼び名が定着したのは、一定の真実を含んでいるためでもある。

誰もが負担する一方で、子どもがいる世帯は受け取る給付が拠出額を大きく上回るのに対し、子どものいない世帯の負担は相対的に重くなる。

名称がもたらす影響もあり、子ども・子育て支援金制度は規模が比較的小さいにもかかわらず、予想外に強い反発を招いている。中には、冷戦期にブルガリアなどで試みられた未婚者への懲罰的課税と同種のものと誤解する向きもある。また、ある世代にとっては、初めて直面する生活費上昇への懸念をさらに強める要因となっている。

だが、最大の問題は、現在最も一般的となった世帯形態に負担を課している点かもしれない。日本では2022年、単身世帯が初めて最大の世帯類型となった。

晩婚化や非婚化の進行に加え、高齢化によって配偶者と死別した後に一人で暮らすケースが増えた結果、全世帯の3分の1が単身世帯となっている。

これは近年の日本社会における最も大きな変化の一つだ。わずか数十年前まで、最も一般的な世帯は夫婦と子ども、そして親(多くは夫側)の三世代同居だった。

しかし、三世代で暮らしている人の割合は長年減少を続け、今では国民的アニメ「サザエさん」に描かれる家族像として親しまれる存在となっている。サザエさんは1969年の放送開始以来、世界最長寿のアニメ番組として、米国の「ザ・シンプソンズ」を超えている。

人口動態の変化は、政府が追加財源を必要とする一因でもある。かつて祖父母が担っていた無償の育児が、いまや公的資金で賄う必要が生じているためだ。

こうした批判を、日本版「マノスフィア(男性中心主義)」の不満として片付ける見方もある。英語ニュースの中には「bachelor’s tax」、つまり「独身男性の税」と訳すものもあるが、日本語には独身を示す性別区分がないことを踏まえれば、かなり無理のある表現だ。

相次ぐ負担増

それでも、こうした不満を軽視すべきではない。親世代の負担が増していることや、出生数を増やす政策の必要性については大きな異論はない。将来の納税者を確保するという観点からも重要だ。ただし、日本の税制や社会保障負担は、すでに中間所得者層で所得が少なめな納税者に最も重くのしかかっており、見返りは最も少ない。

新卒者が来月、就労を開始すると、多くが初任給から年金、医療保険、所得税、住民税として差し引かれる額の大きさに衝撃を受けるだろう。こうした負担は、キャリアの初期段階にある人々にとって特に重く感じられる。住民税は一律10%で、社会保険料は高所得層に対して一部上限が設けられているためだ。

人口動態の観点から見れば、現在の独身者は将来の新婚層となるのが理想だ。しかし、40代後半では男性の約3割、女性の約2割が結婚していない。貯蓄が難しい状況は、結婚や出産の時期を遅らせる要因となり、親(もしくは政治家)が望む子どもの数を持てない可能性を高める。

また、極めて低所得の世帯には負担軽減措置があるほか、過去10年の少子化対策によって学童保育や育児休業の利用は安価で身近になったが、単身世帯の負担はむしろ増している。

消費税の引き上げや生活費の増加、円安、住宅ローン金利の上昇と、負担増が相次いでいる。だからこそ、手取りへの影響が小さくても独身税という呼び名は反発を招く。日本でも他国と同様、若年層は現役世代に集中する負担に不満を抱き、さらなる負担増を警戒している。

出生率は女性の教育やキャリア機会の拡大と最も強く相関しており、どのような政策変更も劇的な改善にはつながらない公算が大きい。

それでも、日本が取るべき対策は若年世代の負担を軽減する方向である必要がある。たとえ負担をより高齢期に移すことになったとしてもだ。独身者に過度に依存すれば、あるいはそう見なされるだけでも、日本は結果として独身者をさらに増やすことになりかねない。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan’s ‘Singles Tax’ Is One Battle After Another: Gearoid Reidy(抜粋)

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