(ブルームバーグ):米宇宙開発企業スペースXの新規株式公開(IPO)に対し、ペルシャ湾岸諸国の政府系ファンドが数十億ドル規模の買い注文を出している。事情に詳しい関係者が明らかにした。人工知能(AI)インフラ投資を支える中東マネーの存在感を改めて示した。
非公開情報であることを理由に匿名を条件として語った関係者によれば、サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とクウェート投資庁は、それぞれ10億-50億ドル(約1600億-8020億円)相当の株式取得を申し込んだ。
カタール投資庁(運用資産5800億ドル規模)も大口投資を行う可能性が高いという。
関係者によると、この地域の政府系ファンドなどはすでにイーロン・マスク氏のロケット・衛星通信・AI事業を手掛けるスペースXの主要株主となっており、マスク氏が目指す1兆8000億ドルの企業価値を前提とすれば、多額の含み益を抱えている。
ただ、スペースX上場後の持ち分希薄化を防ぐために、今回の投資予定額のうちどの程度が既存株式の維持に充てられるのかは現時点で明らかになっていない。
湾岸諸国からの投資意欲は、世界の機関投資家による同社IPOへの旺盛な需要の一部に過ぎない。ブルームバーグ・ニュースが報じたところによると、大幅な応募超過となっており、中には100億ドル超の株式取得を希望する投資家もいる。ただし、最終的な割り当て額はこれを下回る可能性がある。
PIFとクウェート投資庁、カタール投資庁の担当者はいずれもコメントを控えた。
中東の産油国は近年、AI分野に数十億ドル規模の資金を投じてきた。投資対象はスタートアップから半導体インフラ企業、データセンター、さらには業界で最も注目される起業家にまで及ぶ。スペースXのIPOは、そうした投資の価値が初めて本格的に顕在化する機会となる見込みだ。一方で、イラン戦争は湾岸諸国の域内におけるAI戦略の推進を鈍らせる恐れがある。
PIFが支援するヒューメインは今年、xAIに30億ドルを投資した。同社によると、この持ち分はスペースX株式に転換される予定だ。また、PIFはキングダム・ホールディングを通じても間接的にスペースXへの投資エクスポージャーを有している。
アブダビの投資会社MGXはアンソロピック、OpenAI、xAIに出資している。AI分野で最も注目される3社に同時に投資することで、それぞれの成長を取り込む戦略だ。カタール投資庁も同様の戦略を進めており、アンソロピックとxAIの双方に出資している。
イランが湾岸諸国を攻撃する事態となったにもかかわらず、この地域の政府系ファンドは、オルタナティブ資産運用会社やプライベートクレジット、テクノロジープラットフォーム、AI関連分野への投資を続けており、数十億ドル規模の資金を投じている。
スペースX傘下のxAIと競合するAIモデルを開発するOpenAIは8日、非開示でIPOを申請した。アンソロピックも前週に同様の手続きを行っている。ブルームバーグの試算によると、スペースX、アンソロピック、オープンAIの3社を合わせると、米株式市場に3兆6000億ドルの時価総額が新たに加わる可能性がある。
マスク氏は中東で緊密な関係を築いてきた。昨年12月にアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した際には、アブダビの王族やドバイの皇太子らと面会する様子が写真で伝えられた。
同氏が率いる複数の事業も中東で存在感を強めている。トンネル掘削会社ボーリング・カンパニーはドバイ・ループの建設を手掛けるほか、エミレーツ航空は機内Wi-Fiサービスの強化に向けてスターリンクを導入。ニューラリンクは中東で初の臨床試験を実施する計画だ。
スペースXは1株135ドルで5億5560万株を売り出し、約750億ドルを調達する見込み。株式は12日に取引開始となる予定だ。
今回のIPOは史上最大規模になると見込まれており、2019年のサウジアラムコによる294億ドルのIPOを上回る見通しだ。
原題:SpaceX IPO Draws Billions in Orders From Middle East Funds (1)(抜粋)
--取材協力:Fiona MacDonald、Omar El Chmouri.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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