米国とイスラエルが2月末にイランへの攻撃を開始して10日余りが過ぎたが、両国は驚くべきハイペースでイランの軍事機構を解体しつつあるように見える。

イラン各地で数千の目標を攻撃し、ミサイル発射装置や指揮ネットワークの機能を低下させ、何人もの軍幹部を殺害した。米人権団体ヒューマン・ライツ・アクティビスツ・ニュース・エージェンシー(HRANA)の暫定集計によれば、民間人も1000人余りが死亡している。

イランも反撃を続け、地域全体にドローン(無人機)やミサイルを発射。米国・イスラエルの防衛体制の脆弱(ぜいじゃく)さを突いている。

中東全域に広がる戦争は、多くの点で前回の戦闘から得られた知見を踏まえて戦われている。紛争を形作る戦術には、イランの発射能力をまひさせようとする米国とイスラエルの取り組みや、安価な自爆型ドローン群に依存するイランの戦略が含まれる。

これらは2025年6月に3カ国が関与した12日間の短期的な紛争で試され、各国の軍隊が数十年にわたり積み重ねてきた経験の上に築かれている。

ワシントン近東政策研究所の調査ディレクターでバイデン政権時に国防総省に勤務したダナ・ストロール氏は「米国とイスラエルの軍は、12日間戦争の終結以降、教訓を吸収・統合し、真に統合された軍事作戦を設計することに時間を費やしてきた」と指摘。「軍事計画と作戦設計は、実行に向けた政治的指示を待っていただけだった」と述べた。

昨年の戦争から米国とイスラエルの計画担当者が得た教訓の一つは、イランのミサイル指揮拠点や発射装置を破壊すれば、大規模攻撃の調整が著しく困難になるということだった。

ミサイル自体は地下に埋設したり、防護を強化したり、国内各地に分散させたりできるが、発射担当要員は無防備で代替も難しい。

そのため今回の作戦では、最高幹部や通信ネットワークと共に重要な標的となった。米当局者によれば、テヘランの発射装置の90%以上が破壊され、弾道ミサイル攻撃能力に目詰まりが生じている。

作戦の分権化

イランは昨夏、対イスラエルだけで500発を超える弾道ミサイルを発射したが、この一連の攻撃は報復攻撃を回避する重要性も示した。

米国とイスラエルの計画担当者が学んだ最も容易な方法は、射程外への移動だ。

進行中の作戦について話す権限がないとして匿名を求めた米軍の意思決定に詳しい関係者によれば、現地の部隊はミサイル一斉攻撃を見越し、今年3月にイランによる航空作戦が始まる前に人員や装備を射程外へ移動させた。

この戦術は効果を上げた。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の分析によると、イランは開戦から最初の8日間で650発を超える弾道ミサイルを発射した。しかし多くは無人の飛行場や大半が退避済みだった米軍施設に着弾した。

米国とイスラエルの攻勢が拡大する中でのイランの初動対応の調整不足が背景にあった。 もっとも、イランも教訓を得ている。昨年の戦争では、軍幹部殺害や通信妨害を含むイスラエルの攻撃により、イランのミサイル戦力の一部がまひした。

その後、イランの計画担当者は作戦の分権化を進め、発射装置を分散させ、最高指導部が殺害されたり指揮系統の一部が破壊されたりしても攻撃を継続できる体制を整えたとみられる。

イランはまた、短期間で大量生産できる自爆型攻撃ドローンへの依存を強めている。

昨年の12日間戦争では、簡易的な巡航ミサイルを積んだ安価な低速ドローン「シャヘド136」数千機をイスラエルに向けて発射したが、多層的な防空・ミサイル防衛網を突破できたものは少なかった。

今回の紛争では開始1週間の時点で、イラン軍は他のいかなる兵器よりも多くのドローンを飛ばしており、より高度な兵器体系が継続的な攻撃にさらされる中でも、地域全体への攻撃を維持できている。

イスラエルはこれらの一斉攻撃の大半を引き続き迎撃しているが、米国には破壊対象のドローンよりはるかに高価な迎撃ミサイルの消耗を強いている。

こうした構図はウクライナでも続いており、安価なドローンの波状攻撃が防空網に負担をかけ、双方の軍に一斉攻撃に対する防御の在り方を再考させてきた。

米国にとっての課題は、イランのドローンをどう止めるかだけではない。同時に数十カ所が標的となり得る場合、はるかに大規模な防衛が必要になると、シンクタンクの新アメリカ安全保障センターの上級研究員で防衛プログラム責任者のステイシー・ペティジョン氏は指摘する。

「イランの作戦は、これまでの作戦では示唆にとどまっていた隙を露呈させた。すなわち、あらゆる場所を防衛する難しさだ」と述べた。

イランは防御リソースの制約を意図的に突き、重防備の少数目標に攻撃を集中させるのではなく、地域に分散する基地やインフラを攻撃しているようだ。

勝利のセオリー

現在の紛争開始以降、米国は他の脆弱性も露呈している。地域内の米施設がイランの攻撃で損傷し、クウェートでのドローン攻撃では米兵6人が死亡した。ワシントンは防空体制の強化と地域基地への追加アクセス確保を急いでいる。

米当局者によると、最先端の地上配備型防空システムである高高度防衛ミサイル(THAAD)向けの3億ドル(約480億円)のレーダーシステムがヨルダンで破壊された。

米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(カリフォルニア州モントレー)の衛星画像分析では、世界でも数少ないカタールの早期警戒レーダーも攻撃を受けたことが示されている。

今回の戦争で見られる戦略は、最近の紛争からの経験だけでなく、米国とイスラエルが数十年にわたり進めてきた情報収集と準備にも基づいている。

1979年のイラン革命以降、中東各地で武装組織を支援し、時に米軍部隊を標的にする政府と米国は対峙(たいじ)してきた。イスラエルのネタニヤフ首相も、政治キャリアの大半をイランとその代理勢力への対抗に費やしている。

しかし、戦争の最も古い教訓の一つは、戦場での成功が、紛争をどのように終わらせるのかという、より困難な問いに答えるわけではないという点だ。

その曖昧さは無視できないものになっている。トランプ政権が国民に伝える戦争の目的は、イランの軍事機構弱体化から体制転換に変わり、さらには差し迫っているとされるイランの対応を未然に防ぐ必要性へと変化した。

アフガニスタンとイラクで部隊を率いたミック・ライアン元オーストラリア陸軍少将は「すべての戦争で、戦争が続くにつれて政策は進化する」が、「一般的にこの進化は、軍事作戦を開始する前に、自らが何を望み、なぜ戦い、勝利のセオリーが何かを正確に理解しているという確固たる基盤の上で起きる」と話した。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:US-Israeli Attacks on Iran Apply Lessons From 12-Day War(抜粋)

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