(経済見通し)成長率(前年比)は26年が+2.4%、27年が+2.0%を予想

米国経済はIEEPA関税の代替措置やイラン戦争の動向など不確実性が高まっており、経済見通しを巡る不透明感が強まっている。

当研究所では経済見通しの前提として、国別関税については、IEEPA関税の代替措置により同関税と同程度の関税収入が確保される一方、従前の実効関税率を大幅に押し上げるような新たな関税は賦課されないと想定した。

物品関税については、3月9日時点の賦課関税が継続されるほか、26前半から半導体に15%、医薬品に25%の関税が適用される前提とした。移民政策では、26年以降も年間不法移民65万人ペースの強制送還が継続するとの想定とした。

規制緩和は成長押し上げ要因となる可能性があるものの、定量的な評価が難しいことから、見通しへの影響は中立とした。

また、イラン戦争については早期に収束し、原油価格は次第に低下、株式市場も回復に向かうことで、米国経済への影響は限定的にとどまることを前提とした。

これらの前提の下、26年は関税政策による経済への影響が25年に比べて緩和されるほか、25年7月に成立したOBBBAに盛り込まれた減税政策の景気下支え効果、金融緩和の継続、AI関連投資の増加などを背景に、成長率は前年比+2.4%と25年の+2.2%を小幅に上回ると見込む。

27年についても、これらの傾向が概ね継続するとみられることから、成長率は+2.0%と底堅い成長を維持すると予想する。

物価については、関税引き上げや企業による価格転嫁に加え、イラン戦争に伴う原油価格上昇の影響によって、当面はインフレ率が押し上げられる可能性がある。

もっとも、イラン戦争の終息や関税によるインフレ押し上げ効果の剥落などを背景に、その後はインフレ率の低下基調が続くとみられる。

消費者物価(CPI、前年同期比)は、関税やエネルギー価格上昇の影響から26年4-6月期に+3.0%程度でピークをつけた後、27年10-12月期には+2.3%まで緩やかに低下すると予想する。

この結果、通年では26年が前年比+2.8%と25年の+2.7%から小幅に上昇した後、27年は+2.4%まで低下すると見込まれる。

金融政策については、FRB内でも政策方針に関する見方が分かれており、不確実性が高い状況となっている。

さらに、26年5月に任期満了を迎えるパウエルFRB議長の後任として指名されているウォーシュ氏が、議長就任後にどのような金融政策運営を行うのかについても不透明感が残る。

もっとも、同氏は最近の発言で、生成AIの普及による生産性向上が賃金やサービス価格の上昇圧力を抑制し、インフレを構造的に沈静化させる可能性を指摘している。

また、実質ベースの政策金利が高水準にあることを踏まえると、追加的な利下げ余地があるとの見方も示している。このため、金融政策は今後、追加利下げの余地を探る展開になるとみられる。

当研究所では、26年に6月と12月の2回の利下げを見込むほか、27年についても6月に1回の利下げが実施されると予想する。

ただし、トランプ政権の関税政策の動向やイラン戦争を巡る地政学リスクなど外部環境の不確実性は大きく、利下げの時期や回数は今後の経済・物価動向によって大きく変化する可能性がある。

長期金利は、当面はインフレ率の高止まりを背景に高水準で推移するとみられる。当研究所では、26年は概ね4.1~4.2%程度の水準で横ばい圏の推移が続くと見込む。

その後、27年にはインフレ率の低下やFRBによる利下げの進展を背景に、長期金利は3.9%程度まで緩やかに低下すると予想する。

もっとも、長期金利の先行きには不確実性も大きい。トランプ政権の関税政策の動向やイラン戦争を巡る地政学リスクによってエネルギー価格やインフレ率が影響を受ける可能性があるほか、財政赤字の拡大が続く場合には国債需給を通じて長期金利に上昇圧力がかかる可能性もある。

このため、長期金利の見通しは、今後のインフレ動向や財政・地政学リスクの展開に大きく左右されるとみられる。

上記見通しに対する主なリスク要因は、イラン戦争の長期化とトランプ大統領の予見不能な経済・外交政策である。中東情勢の悪化によってエネルギー価格が大幅に上昇する場合には、インフレ率の上振れや金融市場の不安定化を通じて米国経済に下押し圧力が生じる可能性がある。

こうした点を踏まえると、今後の米国経済は引き続き同大統領の経済・外交政策に大きく左右される展開が続く可能性が高い。