中小企業における制度導入の課題

ストレスチェック制度の課題

現在のところ、ストレスチェックの効果については、学術的にも実務的にも統一的な見解が確立されているとは言えない。

しかし、従業員のメンタルヘルスに対する理解が深まることや、ストレスチェックを通じて従業員自身が自身のストレス状況を把握できる点、さらには高ストレス者が医師等による面接指導につながる契機となる点など、その意義については好意的に受け止められているようだ。

また、結果を活用した集団分析を通じて職場環境の課題を把握し、改善につなげるという制度本来の活用方法についても、一定の評価が共有されていると考えられる。

一方で、従業員の心理的ストレス反応を改善するためには、単にストレスチェックを実施するだけでなく、その結果を踏まえた職場環境改善を継続的に行うことが重要であると指摘されている。

しかし、実際にはストレスチェック後に集団分析を実施し、さらにその結果を具体的な職場環境改善にまで結びつけている事例は依然として少ない。

そのため、どのような取組が実効性のある職場環境改善につながるのかについては、十分な知見が蓄積されておらず、今後の課題として残されている。

50人未満の職場に適用することへの課題

50人未満の事業場に導入するにあたっては、特に、産業医の選任義務がないため専門職が不在であること、従業員数が少ないため、個人のプライバシーの保護が難しいこと、人的・予算的リソースが限られており負担感が大きいことが課題となる。

厚生労働省は、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(素案)」を公表し、ストレスチェックの実施や分析、医師の面接等については外部機関を活用することを推奨している。

重要とされている集団分析や職場環境改善に向けては、商工会や協同組合などの業界団体に所属する企業が共同で取り組む「業界団体所属型」や、工業団地・商店街・卸団地など地域的に集積した企業が連携する「地域集積型」による実施といった工夫も提案されている。

こうした枠組みは、専門人材やコストを共有できる点や集団を形成することによって事業場同士の職場環境を比較可能とする点で有効だと思われる。

一方で、配置転換や業務分担の見直しといった対応が、規模の大きい企業や職場に比べて取りにくい小規模事業場では、集団分析の結果を踏まえた職場環境改善の選択肢が限られるという制約もあると考えられる。