メンタルヘルス不調による休職・退職の実態
(1) 労災補償請求件数・支給決定件数の推移
図表には、厚生労働省が毎年公表している、精神障害に関する労災補償の請求件数および支給決定件数の推移を示す。
労災補償は、精神障害が業務に起因して発症したと認定された場合に支給されるが、支給基準は社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて見直しが行われている。
支給決定までの期間も変わっている可能性があることから、単純には比較できないが、業務に起因した不調者が減っている様子は確認できない。
(2) 中小企業における傷病手当金の支給理由となった傷病
図表に、主に中小企業に勤める人が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)が公表している「現金給付受給者状況調査報告」に基づき、傷病手当金の支給理由となった傷病の構成の推移を示す。
もう1つの図表は、年齢別の傷病の構成である。
傷病手当金とは、被保険者が病気やけがにより働くことができず、一定期間会社を休んだ場合、所定の要件を満たせば、生活保障として健康保険から支給される手当金である。
なお、メンタルヘルス不調による傷病手当金の支給件数は、業務起因性が認定された労災とは異なり、私生活要因や業務起因が特定できないケースも含まれる。
一方で、一定期間以上就労が困難となるメンタルヘルス不調者が可視化された結果であり、職場におけるメンタルヘルス不調の発生状況や広がりを把握するためには有用だと考えた。
これによると、2024年度に支給件数が最も多かった傷病は「精神及び行動の障害」で4割程度だった。
いわゆるメンタルヘルス不調が含まれる傷病である。
次いで「新生物」「筋骨格系及び結合組織の疾患」「循環器系疾患」「損傷、中毒及びその他の外因の影響」と続く。
時系列でみると、コロナ禍における一時的な変動を除いて、精神及び行動の障害の構成比は、継続的に上昇している。
年齢による違いをみると、20〜30代ではおよそ6割が「精神及び行動の障害」である。
「精神及び行動の障害」の占める割合は年齢が高くなるほど低下している。
高年齢で高い主な傷病は「新生物」と「循環器系の疾患」「筋骨格系・結合組織の疾患」「損傷、中毒及びその他の外因の影響」である。
以上見てきたとおり、メンタルヘルス対策は規模の大きい企業で先行している。
しかし、メンタルヘルス不調による休職や退職者が同じ職場にいる可能性は、規模の小さい企業では大きい企業に比べて低いと考えられるものの、規模の小さい企業においても、特に若年層ではメンタルヘルス不調による休職等の割合が高く、その構成比は上昇傾向にあることから、重要な課題であると考えられる。

