ポイント解説:年金記録訂正の現状と、個人が年金記録を確認するための仕組み

2025年12月に開催された社会保障審議会の年金記録訂正分科会では、年金記録の訂正に関する事業の状況が報告された。本稿では、年金記録訂正の経緯や現状と、個人が年金記録を確認する方法を確認する。

1|経緯:2015年から平時の訂正に移行

残念ながら、年金記録の誤りは起こりうる。

2007年2月に、「消えた年金記録」とも呼ばれた基礎年金番号に統合されていない加入記録の存在が明らかになり、同年6月に「年金記録確認第三者委員会」が総務省に臨時設置され、総務大臣から厚生労働大臣への「行政のあっせん」として年金記録訂正の手続きが始まった。

当初は過去から累積した記録問題への対応が中心だったが、処理が進むにつれて平時に起こる誤りへの対応や恒久的な制度としての整備が必要になった。そこで、審議会での議論を経て、2015年3月から現在の仕組みに移行した。

現在の仕組みでは、
(1)加入者は記録の訂正請求権を持つこと、
(2)給与明細書などで明確に確認できる事案は日本年金機構(各地の年金事務所)で直ちに訂正すること、
(3)それ以外の事案は厚生労働省(地方厚生局)が民間有識者の審議結果をもとに記録を訂正すること、
(4)不服がある場合は不服申立や司法手続きが可能なこと、
などが整備されている。

2|現状:賞与に関するものが中心

記録訂正の処理件数は、2008~11年度には1か月当たり4000~5000件程度あったが、近年は400件程度に減少し、さらに日本年金機構で訂正できる事案が約8割を占めている。

2024年度の内訳をみると、年金機構分のすべてと地方厚生局分(審議分)のほとんどが、会社員などが加入する厚生年金に関する訂正となっており、その中では賞与に関するものが多くなっている。

また、日本年金機構で処理されたものの約9割が、一括請求(1つの事業所に勤める複数の従業員の訂正を事業所単位で一括して請求する手続き)となっている。

近年の同分科会での日本年金機構や社会保険労務士である委員の発言によれば、ある従業員が「ねんきん定期便」などを見て給与明細では厚生年金保険料が控除されているにもかかわらず年金記録に反映されていないことに気づいた場合や、年金事務所が事業所を調査した際に臨時の特別手当が賞与として申告されていないことが判明した場合などに、一括での訂正が請求される事例がある。

3|課題:「ねんきん定期便」での加入記録確認

このような傾向を受けて、日本年金機構では、その事業所が新規に厚生年金の適用対象になった際に賞与の支払い月を確認し、その時期に合わせて届出を案内する、などの対応を行っている。

しかし、近年の訂正件数は、定常的とも言える水準で推移している。また、今後は厚生年金の適用が社員50人以下の企業へ拡大されることを考慮して、訂正の増加を懸念する声もある。

そこで重要と考えられるのが、個人による「ねんきん定期便」の確認である。「ねんきん定期便」と言えば、将来に受給できる年金の見込額が注目されがちだが、過去1年間の毎月の加入記録も印字されている。

2025年6月からはマイナポータル経由でも電子版の「ねんきん定期便」を確認できるようになっており、給与明細などがあれば比較的早期に記録の訂正が可能なことを考えれば、毎年の確認が肝要と言えるだろう。

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋邦夫
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