2025年「就労選択支援」の創設 ―― 加速する人材流動と新たな懸念
ここで看過できないのが、2.7%への法定雇用率引き上げを2026年7月に控えたタイミングで、2025年10月から始まった新サービス「就労選択支援」の影響である。
就労選択支援は、障害者の就労能力や配慮事項を客観的にアセスメントし、就労継続支援B型などの福祉就労から、一般就労への移行を促す制度である。
一見、企業の直接雇用を後押しするように見えるが、実態は障害者雇用ビジネスへの「人材供給ルート」となる可能性が高い。
なぜなら、この就労選択支援制度によって潜在的な労働力が市場へ供給されると同時に、企業側にはその受け入れ体制の真価を問う『試金石』が突きつけられるからだ。
専門家によるアセスメント判定にもとづき、「聴覚過敏のため、静寂な個室での業務が必須」や「専門スタッフによる常時サポートが不可欠」といった、具体的かつ高度な配慮が求められることがある。
しかし、都心のオフィスビルで、これらを即座に用意することは、物理的にもコスト的にも困難だ。
企業規模によって障害者の実雇用率に差がある。これは、企業が実際に用意できる業務の幅が限られていることを意味する。
就労選択支援によるアセスメントで、多様で手厚い配慮が必要と判断された場合、こうした既存業務の中で受け入れることは容易ではない。
その結果、企業は自社内での対応を断念し、環境や支援体制が整った外部の就労拠点に依存せざるを得なくなっている。
ここで、 企業側には「規制逃れ」ではない、外部委託をするための「正当な理由」が生まれる。
「企業側は判定結果を尊重し、障害者に最適な環境を提供したい。しかし、本社ではそれが不可能だ。だからこそ、環境が完備された専門のサテライトオフィスを利用するのだ」という論理である。
つまり、厚生労働省は「安易な丸投げ」を防ごうとしているにもかかわらず、国が定めたアセスメントの結果が、結果として「自社での対応は難しいが、外部に任せるなら可能だ」という判断を後押ししてしまう。
そのため、障害者雇用ビジネスを活用する根拠を、国自らが与える構造になっているとも考えられる。
就労選択支援制度によって、障害のある人が職場を移りやすくなる一方で、企業は本社で受け入れるのではなく、環境整備を外部に任せられるビジネスに頼りやすくなっている。
こうした仕組みこそが、規制が強化されている状況にあっても、この市場が拡大し続ける根本的な理由である。
